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2021.07.22 16:00  マネーポストWEB

知人に貸した25万円の返済求めると「借りてない」の一点張り どうする?

「借金を返してほしい」と伝えたところ…(イラスト/大野文彰)

 お金の貸し借りには何かとトラブルが伴うもの。もしも、「貸した」「借りてない」で揉めた場合、どうすればいいのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。

【相談】
 夫婦で小さな喫茶店を営んでいますが、アルバイトのAさんとの金銭トラブルで困っています。Aさんとは3年ほどのつきあいですが、シングルマザーで大変だと聞いていたため、家の引っ越し代や育児にかかるお金が足りないときに数万円ずつ貸し、総額25万円ほどになりました。

 Aさんがアルバイトをやめることになったので、「借金を返してほしい」と言ったところ、「お金は借りていない」の一点張り。借用書は作っていなかったのですが、お金を返してもらうことはできますか。三重県・中沢香苗(60才・自営業)

【回答】
 あなたが店員のAさんに貸したお金を返すように請求するには、まず2人の間で金銭の授受があったことがすべてのスタートになります。この点で問題がなければ、Aさんが返済義務を否定する根拠を証明する必要が出てきます。

 しかし、Aさんがお金を受け取ったことを否定する以上、あなたは金銭交付の立証なくしては返金請求できません。借用書があれば、通常はお金を借りたことと返す時期が書かれているので、Aさんが返済済みを証明できない限り、返金の請求は認められます。

 約定の返済日(定めがなければ貸付日)が何年も前だと、時効期間(昨年4月1日以前の貸金の場合は10年間、以降であれば5年間)が経過していれば時効になりますが、ここ3年ほどのことですからその心配はありません。

 借用書がなくて受取書や振込受付書などお金の授受を証明する証拠があった場合でも、Aさんは、弁済や時効の反論をするほか、お金はもらったと反論する可能性もあります。とはいえ、あげたお金の受取書を取るのも不自然な気がしますし、返さなくてもよいという特別の事情がない限り、認められないでしょう。

 そもそも金銭授受の証明は文書がないと困難です。例えば立ち会った人がいたとしても、その人が別の店員であなたの意思に反することが難しい立場の場合にはその証言の証明力が弱まります。また、なぜ借用書や受取書がないのかの説明も必要です。もしAさんが徹底して金銭の受け取りを否定すると、それを覆して現金交付の事実を証明することはできないと思います。

 もっとも、受け取りを否定しているくらいですから、仮に証明できても、実際に取り立てることは大変だと思います。お金の取り立ては裁判を起こして裁判所から判決をもらって、さらに強制執行を申し立て、Aさんの財産を売却してもらい、その代金から回収することになりますが、財産を把握できないと判決は絵にかいた餅と同じで実効性はありません。めぼしい財産が見当たらないときは、手間暇かけて裁判手続きをするのはかえって大損という結果にもなります。

 親しい人にお金を貸すときにはもらいづらいかもしれませんが、借用書を書かせるべきです。そうすれば借りた方も返済義務を意識します。借用書をもらわず貸す以上は、返してもらわなくてもよいというくらいの気持ちでないと、後で悔しい思いをすることになります。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座、B型。

※女性セブン2021年7月29日・8月5日号

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