芸能

追悼 酒井政利さんが語った「“異”の筒美京平と“怪物”阿久悠」

音楽プロデューサーの酒井政利さん(写真は酒井プロデュースオフィス提供)

音楽プロデューサーの酒井政利さん(写真は酒井プロデュースオフィス提供)

 7月16日、音楽プロデューサーの酒井政利さんが旅立った。享年85。生涯で手がけたアーティストは300組以上。類まれな発想力と、才能を見抜く眼力であまたのスターを世に送り出してきた。多年にわたる功績から昨年11月には文化功労者として顕彰。エンターテインメント業界のレジェンドと言っていいだろう。

 松竹を経て、日本コロムビアに入社した酒井さんは1964年、青山和子『愛と死をみつめて』で日本レコード大賞を受賞。1968年には設立されたばかりのCBS・ソニーに入社し、朝丘雪路や金井克子ら、ベテラン歌手を再生する一方、南沙織、郷ひろみ、山口百恵などを発掘・育成し、アイドル黄金時代を築く。1979年にはジュディ・オング『魅せられて』で2度目のレコード大賞を受賞。音楽プロデューサーという存在を世に知らしめたヒットメーカーであった。

 ソニー移籍後、新しいポップスを作ろうと考えた酒井さんは同時期、『ブルー・ライト・ヨコハマ』で歌謡界に新風を吹き込んだ若き作曲家・筒美京平さんに着目。南沙織『17才』(1971年)、郷ひろみ『男の子女の子』(1972年)、『よろしく哀愁』(1974年)、浅田美代子『赤い風船』(1973年)などで筒美さんを起用し、大ヒットを連発する。

「それまでにない新鮮な音楽を求めていた私にとって、大学でジャズに傾倒し、レコード会社で洋楽ディレクターを務め、作曲家に転じるや洋楽テイストに溢れた曲を次々とヒットさせていた京平さんはうってつけの人物でした」

 かつて酒井さんはそう語っていた。

 二人が組んだ極めつきの作品は『魅せられて』だろう。酒井さんから「ジュディを大人の歌手に変貌させたい」と依頼された筒美さんはエレガントでゴージャスな楽曲を提供。難易度の高いメロディに苦労するジュディを丁寧に歌唱指導し、ミリオンヒットに導いた。酒井さんはこうも語っている。

「筒美京平という天才的な才能は“異”の人だ。異国の異文化の音楽を採り入れる異能さは異彩を放ち、異質だが誰もが受け入れる。京平さんとの作品づくりは触発合戦。その緊張感が実に心地よかった」

 では作詞家・阿久悠さんとの仕事はどうか。代表作としてはフォーリーブス『踊り子』(1976年)、郷ひろみ・樹木希林『林檎殺人事件』(1978年)などが挙げられるが、数はそれほど多くない。これは二人がライバル関係にあったことによる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン