打っても感染はする
血液内科医の中村幸嗣さんは「そもそもワクチンを打った人が、死亡リスクの高い人である可能性がある」と指摘。
「日本と同様にイギリスもリスクのある人を優先して接種を始めたので、ワクチンを打った集団に高齢者が多く、打たなかった集団には若者が比較的多かったのでしょう。わかりやすく言えば、ワクチンを打ったけれど寝たきりの老人と、ワクチンを打たなかったが外で遊び回っている若者の、どちらが感染したときに命を落としやすいかということです。従ってワクチンを接種したら死亡率が5倍になるという数字は単純に鵜呑みにできません」
イギリスでは7月下旬現在、ほぼすべての新規感染者が、4月頃にインドから流入したデルタ株だ。多いときで1日1500人超、計12万人を超える人が新型コロナで命を落としたイギリスだが、ワクチンが行き渡りつつあるいま、感染力が強いデルタ株でも、死亡者は1日数十人にとどまる。公衆衛生局によれば、デルタ株でも入院に至る重症化を1回接種で8割弱、2回接種では9割超防げるという。
実際、先の調査でも、死亡者の大半を占める高齢者層(50才以上)において、ワクチン未接種の感染者の死亡率は5.6%で、2回接種の人の死亡率1.64%を大幅に上回った。
ではなぜ全年代において、2回接種の感染者の方が、未接種の感染者より死亡率が高かったのか。
それは、若年者層(50才未満)においての未接種の感染者の死亡率(0.028%)と、2回接種の感染者の死亡率(0.026%)が拮抗していることと、若年者層の未接種の感染者数が圧倒的に多かったので、全体の未接種感染者の「分母」が大きくなり、死亡率が大幅に下げられたことが理由だろう。
東京でも7月下旬時点でデルタ株は全体の3割超まで増えてきていて、ワクチン接種が進んでいる。今後、東京でもイギリスと同様に、数字の上で「ワクチンを打っても若い人の死亡率が減らない」という状況になる可能性もあるだろう。
中村さんは、「ワクチンを打ってもコロナに感染することがある」とも指摘する。
「そのデータを見ると、2回ワクチンを接種しても、一定の割合で感染者が発生することがわかります。
2回接種してから感染すると、“ワクチンを3回接種した状態”に近くなり、免疫機能が強化されている状態では、ワクチン接種2回目以上に、発熱など副反応のような症状が強く出ることが考えられます。その傾向は、もともと免疫機能が充実している若者の方が顕著かもしれません。
そうしたケースでは、ワクチンを接種してから感染した人の方が、接種してない人よりも死に至りやすくなる可能性があります」(中村さん)