医師・西村秀一氏(国立病院機構仙台医療センター・ウイルスセンター長)

医師・西村秀一氏(国立病院機構仙台医療センター・ウイルスセンター長)

 巷に蔓延る過剰なアルコール消毒に「嫌気が差した」という声は多い。

「最近、お店などで空のまま放置された消毒液のボトルが目に付きます。汚れて黒ずんでいるボトルもあり、コロナとは別の病原菌を拾いそうで嫌な気分がする」(40代女性)

「行政の指導が厳しいからボトルをいくつも置いているが、お客さんに消毒を求めるわけでもない。“感染対策徹底”のポーズとして置いているだけの状態です」(飲食店店主)

 一部では、もはや形骸化している感すらあるアルコール消毒だが、やり過ぎると逆にリスクもあるという。

「皮膚の表面の角質層には細菌などの病原体から体を守るバリア機能があります。ウイルスを防ぐつもりが、過剰なアルコール消毒で手荒れを起こし、他の細菌からの防御ができなくなることがあります」(西村氏)

 皮膚科医の青柳直樹氏(ドクターメイト代表)もこう指摘する。

「たとえば介護施設では、職員らの入室時などドアノブや物に触れるたびに消毒していましたが、今では接触感染がほとんど起こらないとわかり、緩和されました。そもそも高齢者の皮膚は薄いうえに皮脂が少なく刺激に弱い。アルコール消毒による肌荒れが原因で、全身に湿疹やかぶれが広がる『接触皮膚炎症候群』になるリスクがあります」

拭いたら機械が故障する

 アルコール消毒液の主成分・エタノールが原因で体調不良を起こす体質を持つ人にも、住みづらい世の中となった。

「アルコール過敏症の妻は、体質的に手指の消毒液が使えません。アルコールが皮膚に付くと痒みや発疹が現われ、吸い込むと気分が悪くなるので、ポンプのそばに近寄るだけで苦痛らしい。店先で店員さんが待ち構えて手に掛けてくることがありますが、それを断わるのは妻としても勇気がいるようです。アルコール消毒ができない人がいることを、世間にはわかってほしい」(70代男性)

 アルコール消毒液に関するトラブルは全国で増えており、「日本中毒情報センター」には、消毒液などが目に入ったという相談が昨年1年間で265件あった。例年の約6倍の件数で、そのうち7割は5歳以下の幼児が関わっていたという。

 そのほか、こんなトラブルも聞こえてきた。

「会社の入り口にあるポンプで手指を消毒しようとしたら、勢いよく出た液が買ったばかりの革製バッグに飛んできて、色落ちしてしまった。それ以来“消毒したフリ”で済ませている」(40代男性)

「非接触の支払い手段として、駅の改札や店での支払い時にスマホを取り出す機会が増えた。コロナ対策のため1日に何度もアルコールスプレーを吹きかけていたら、画面のひび割れ部分から内部に液が入って故障してしまった」(40代女性)

 多くの人が仕事に使うパソコンでも、同様の事例が報告されている。大手電気メーカーのNECは、コロナの影響で増えた問い合わせに応えるため、検証作業を行なった。

「1万回往復で拭き取り試験を実施した結果、繰り返しのアルコール清掃により筐体部分が劣化し、ひび割れや塗装が剥がれるなど修復不能な損傷が発生する可能性が判明しました」(同社広報室)

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