EV専用モデルは売れない「フィアット500」

 今の時代にローテク車に乗るとはどういうことなのか──。それを体感するため、自動ブレーキをはじめアップトゥデートな装備を一切持たないクルマで敢えてのロングドライブを敢行してみた。

 クルマはイタリアの自動車メーカー、フィアットのAセグメントミニカー(ハッチバック車でおおむね全長3.8m未満)、「500(チンクエチェント)」。欧州デビューは2007年で、現在はすでにモデルライフ15年目に突入している古参モデルである。

フィアット500Cのサイドビュー。デザイン重視に見えるが、実用性は高い

フィアット500Cのサイドビュー。デザイン重視に見えるが、実用性も高い

 これほどの長寿モデルは販売台数が少なかったり用途が特殊だったりというケースが大半だが、500はデビューから今日まで、根拠地の欧州Aセグメント市場では同じフィアットの「パンダ」と圧倒的な2トップを形成する人気モデルだ。

 同社のレジェンダリーなモデル、500の登場50周年に合わせ、わりと軽いノリで作ったものが偶然スマッシュヒットとなった。フィアット自身がそれに面食らってモデルチェンジの機会を逸し、その結果長寿化したというのが実情だろう。

 本国では新世代モデル「500e」をデビューさせたが、それは電気自動車専用モデル。ガソリン版は依然として旧世代が併売されているのだが、500eは思うように売れない一方、ガソリン版はバカ売れのペースが落ちる気配がないというのが現在の状況である。

フィアット500Cのリアビュー(山口・パープルの丘にて)

フィアット500Cのリアビュー(山口・パープルの丘にて)

フィアット500C(琵琶湖畔にて)

フィアット500C(琵琶湖畔にて)

 テストドライブしたのは500C。原型である500ハッチバックから2年後れの2009年にデビューした、電動オープントップモデルである。

 ボディ側面の枠は残るがリアガラス部まで屋根の開閉が可能という、キャンバストップとフルオープンの中間的なキャラクターである。搭載エンジンは875cc2気筒ターボで変速機は一風変わった自動クラッチ式5速AT。ドライブルートは東京~九州周遊で、最遠到達地は鹿児島・薩摩半島南端の長崎鼻。総走行距離は約3700km。

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