また、音楽評論家のスージー鈴木さんは、「いまから考えるとソロ初シングルが『君をのせて』で本当によかった」と語る。
「 “日本版・明日に架ける橋”と評する声もあるほど。ロックバンドへのこだわりが強かった沢田研二の、シンガーとしての側面を見ることができた、傑作バラードでしたね」(スージーさん)
その『君をのせて』の作曲者・宮川泰さんが、《君の色気は天下一品。男が惚れる色気で、千年に1人出るかどうかのスーパースター》(※4)と評したように、色気とルックス、甘い歌声が作家陣の創作意欲をかき立てた点も見逃せない。
(※4 2001年放送で沢田研二出演の『スタジオパークからこんにちは』(NHK)で紹介された手紙より)
「沢田研二は、新曲ごとにイメージの殻を破る。そこがすごいところ」(ユカイ)
オリコン1位と日本歌謡大賞を初獲得した『危険なふたり』は、作詞・安井かずみ、作曲・加瀬邦彦による軽快なロックだが、その後も沢田の変化は続く。
「PYG結成時は“白馬の王子様のジュリーが不良になっちゃうのでは”と心配しましたが、その後、さらにイメチェンに拍車がかかりました」(國府田さん)
フランス志向の曲も発表し、アイシャドーなどのメイクにも挑戦し始める。
「沢田さんのスタッフをしていた知人の話では、沢田さんは、『なんでも自分の歌にする!』というスタンスなのだそうです。つまり、どんな曲でも自分の歌にしてしまう自信と、作家が要求する“まな板の鯉”になる覚悟がある。それがいかに圧倒的な才能に裏打ちされたものか。同じシンガーだからこそ、その凄(すご)みがわかるんです」(ユカイ)
【ダイアモンド☆ユカイの沢田研二『わが心のベスト3』】
1位『時の過ぎゆくままに』(1975年)
作詞:阿久悠、作曲・編曲:大野克夫
ドラマ『悪魔のようなあいつ』(TBS系)の主題歌。大野克夫さんの曲はコンペで選ばれた。
2位『気になるお前』(1973年)
作詞:安井かずみ、作曲:加瀬邦彦、編曲:Harry Robinson
洋楽的な魅力の隠れた名曲。コンサートでも人気で、ユカイ自身もカバーしている。
3位『魅せられた夜』(1973年)
作詞・作曲:J. Renard、訳詞:安井かずみ、編曲:東海林修
ソロ草創期のフレンチポップス系の楽曲。
【プロフィール】
ダイアモンド☆ユカイ/ミュージシャン。1962年生まれ、東京都田無市出身。『RED WARRIORS』のボーカルとしてデビュー。俳優、声優、タレントとしても活躍中。
取材・文/北武司 撮影/浅野剛 写真/女性セブン写真部
※女性セブン2021年9月2日号