最初は夏風邪だろうと軽く思っていたが、ある日突然、次女は38℃を超える熱を出して動けなくなった。
「病院に連れて行ったら新型コロナに感染していることがわかり、自宅療養になりました。家では手洗いやマスクを徹底していたのに、どうやら習い事に行った際に友達からうつされたようです。
狭いわが家では次女だけ隔離することは到底できず、しかも高熱で苦しそうだったので、私が体を拭いたり氷枕を替えたりして、ほぼつきっきりで看病しました。長女はできる限り次女と接しないようにして、夫は会社近くのホテルで過ごしました」(A子さん)
だが数日後、今度はA子さんが発熱した。時を同じくして夫も体調を崩し、夫婦ふたりして陽性となった。
「まだ入院先が見つかる時期だったので夫は入院し、私は自宅療養でそのまま次女の面倒をみました。症状のなかった長女は行き場がなく、自宅で私と次女となるべく距離を取って過ごしました。私は頭痛や倦怠感を抱えながらも、『長女にうつしてはいけない』とビクビクしていましたが、結局長女も陽性で一家全滅。子供が感染したら家庭には逃げ場がなく、本当にどうしようもないことを肌で感じました」(A子さん)
現在はデルタ株のまん延で自宅療養が急増中だ。8月17日には、家族全員が感染して、夫と子供とともに自宅療養していた40代女性が都内の自宅で倒れて亡くなっていたことが明らかになった。
科学者が見誤った「悪魔の変異」は止まることを知らない。世界保健機関(WHO)が警戒する変異株は、まだまだある。イギリスで発見されたイータ株、インドで生まれたカッパ株、アメリカで初確認されたイオタ株。そして、ペルーで発見され、アルゼンチン、チリ、エクアドルやアメリカ南部など、世界約30か国に広がっている「ラムダ株」。
ラムダ株はまだ充分なデータがないものの、デルタ株よりもさらに感染スピードが速く、ファイザー製やモデルナ製のワクチンが体内に作る抗体を“すり抜けやすい”特性を持つ可能性がある。ワクチン接種済みの人が感染する「ブレークスルー感染」を引き起こす恐れもある。
もはや「想定外」という言葉は死語だ。ウィズコロナの時代には、あらゆることが起こり得る。子供は感染しない、重症化しないは、今は昔の話。私たちも考え方と対応を柔軟に「変異」させなければならない。
※女性セブン2021年9月9日号