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2021.08.30 19:00  週刊ポスト

鶴瓶が語る代々木忠監督「僕と代々木さんは一緒。リアルが好きなんです」

笑福亭鶴瓶も代々木監督のファン

笑福亭鶴瓶も代々木監督のファン

「AV界の黒澤明」と呼ばれる巨匠・代々木忠監督(83才)が『週刊ポスト』で引退を発表した。『ザ・面接』『ドキュメント・ザ・オナニー』の傑作を生み出した代々木監督は各界に熱心なファンがおり、落語家の笑福亭鶴瓶(69才)もその一人。鶴瓶が代々木監督との思い出を語る。

 * * *
 代々木さんと出会ったのは、僕が司会をやってた『日本のよふけ』(フジテレビ系、1999年)という番組やったんですよ。僕はどの番組でも「あの人を呼んでほしい」って言うことはまずないんですが、当時のプロデューサーが「代々木さんにセックスの真髄について聞いてほしい」と言うんで、番組にお呼びしたんです。

 それで初めて作品を見たんですけど、どう見てもヤラセじゃなく、素人の女の人なんですね。本当の素人が来て、オナニーをさせられてるんですよ(『ドキュメント・ザ・オナニー』)。

 それが本当にリアルでね。ドキュメントはもう最高でした。女の人がオナニーして、つい自然に元カレの名前を叫ぶシーンがあって。カレの名前なんか聞いてないんですよ。だけど果てる瞬間に、元カレの名前を呼ぶっていうのは、スゴいなって。作っても言えない世界を、人間の心の奥底にあるものを引き出す人が代々木さんやな、って思ったんです。だから番組の後に仲良くなって、よく電話するようにもなりました。

 僕はなんでもリアルが好きなんですよ。『家族に乾杯』(NHK、1997年~)も、どこに行くかも一切決めずに、行った先で起こったことをそのまま放送する。だから「本当なのか?」と疑うような面白いことが起こるんですね。

 落語家でも、噺の枕に昔から決まった同じことをしゃべる人もいるんですけど、僕は日常にあったことをしゃべる。最もリアルなことは、さっきあったことなんですよ。お客さんも「さっき本当にあったんやな」って想像しやすいでしょ。

 だから変な話、代々木さんと僕は似てるんですよ。一切ヤラセのない人だから。僕の番組でも、アポなしで行ったほうが、会った人の本当の感情が出る。セックスだって、やることはみんな一緒かもしれないけど、でもそこに至るまでの心情の変化があるじゃないですか。その心情が少しでも見えたほうが、面白いなって思いますね。

 最近はAV女優になりたいって志願する子もいはるんでしょ? もうこの年やからAVも見てないけど、それだとリアルさは薄れるんじゃないですか。今の時代、昔より人間の本能みたいなものがどんどん希薄になってる気がする。でも嘘でイッてるとかじゃなくて、ほんまに濡れてほんまに挿れてほしい瞬間っていうのはあると思うんですよ。

 代々木さんの要素を受け継いだ人には、そういう本質を追究する映像を撮ってもらいたいですね。ほんまは、もういっぺん代々木さんに撮ってほしいですよ。

取材・文/河合桃子

※週刊ポスト2021年9月10日号

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