退院時に薬は8種類まで減り、「一包化」が可能になった。
「一包化とは、飲むタイミングが同じで一回に何種類かの錠剤を服用する場合に、それらをまとめて一袋にすることです。一包化で飲み間違いや紛失を防ぐことができ、アドヒアランスを向上できます。また、薬が少なくなると『この薬はこのためにある』と理解が進みやすい」(谷本医師)
もう1人、糖尿病を患う70代男性は入院時に12種類の薬を服用。薬効や処方意図をほとんど把握せず、自己判断で「妻のインスリン」まで使用していたため、全面的に治療を見直した。
主病の糖尿病に対する治療薬はインスリンの効きをよくするメトホルミンに一本化し、すぐに効くタイプと効果が持続するタイプの2種類のインスリン注射で血糖コントロールを図った。
また、依存性のある抗不安薬と睡眠薬の処方をとりやめ、腰痛に対する鎮痛薬とその副作用予防で処方された胃腸薬なども併せて中止した。
さらに薬剤師が医師や看護師などと連携し、患者とその家族に繰り返し処方指導を行なうことで、患者の自己管理による服薬が安定した。その後の経過観察も良好で、退院時は4種類(+インスリン注射)まで薬を減らせた。
「丁寧な減薬指導をすると患者のアドヒアランスが向上し、退院後も服薬順守を維持できるのです」(長澤氏)
※週刊ポスト2021年9月10日号