一方で、森田氏が指摘する通り、コネ入院というもの自体は存在するし、お金を積めば特別な個室に入院できるのが現実だ。まるでホテルのスイートルームのような高級病室を持つ某病院には“政治家優先枠”も存在している。コロナ前から、特に体調が悪いとされていなかった政治家が、スキャンダルを報じられるや否や“体調不良”で入院して雲隠れするケースは何度となくあった。
世界を見渡せば、日本の「一般人」への医療体制は、各国と比較して手厚いものであると言える。国民皆保険で、コロナ陽性者の治療費は無料。コロナ禍以前は、有力者と一般人の間にあるのは「入院部屋が豪華な個室か否か」「食事が豪勢か否か」程度の差で、受けられる医療に関して大きな違いはなかった。しかし、医療崩壊によって、今の日本では「医療を受けられるか否か」の差が生まれてしまった。
現在の医療ひっ迫の原因のひとつには、民間病院でのコロナ患者の受け入れが少ないことが挙げられており、その背景には、政府や日本医師会による不作為がある。
つまり、有名人や権力者が入院したという個別ケースに「ずるい」と騒いでも仕方がない問題なのだ。本質は、民間病院も含めて医療界全体でコロナ禍を乗り越える体制を作ることにこそあると言えるだろう。批判の矛先は、“カネ”や“コネ”が命の分かれ目になってしまう事態を招いた政府や医師会に向かうべきなのではないか。