最初は薬の量を増やす
転院に際して、坂東医師の指導を守るよう心がけたというAさんだが、譲れないことがあった。坂東医師から「外食、飲み会を控えるように」と言われたが、「仕事柄、それは無理です」ときっぱり断わったという。坂東医師はこう振り返る。
「外食は味付けが濃いため、塩分過多になってしまいます。Aさんのように避けられない場合はつまみの塩分量に気をつけるように伝えます。Aさんは、ばら寿司が好物でしたが、それだけで塩分を約4gも摂ってしまう。管理栄養士が料理の写真に実物の塩を添えてみせることで意識を変えてもらいました。お酒もビールは1日500までと基準を設けました」
Aさんは以降、居酒屋に行っても「つまみは少しつまむだけになった」と意識の変化を口にする。
肝心の降圧剤についても、診療当初、驚くことがあったという。
「前の病院で処方されていたノルバスクに加えて、ブロプレス4mgが追加されたんです。“いきなり薬が増えて、大丈夫なのか”とびっくりした。坂東先生からは『最初は血圧を下げて、降圧剤が効いている期間を長くしてから量を減らしましょう』という説明でした」
結果、Aさんは初診から半年ほどでノルバスクを中止でき、以降、ブロプレス1種で血圧を調整する生活となった。Aさんの減薬基準は「家庭血圧120未満が3日間続いたら2mgずつ減らす」となっている。
「今年1月には8mgを服用していましたが、6月には6mg、4mgと減り、今は一時的ですが断薬できています。減薬基準が明確で、いつでも先生に電話で相談できるので、不安は感じていません」
【プロフィール】
坂東正章(ばんどう・まさあき)/1953年生まれ。徳島大学医学部医学科卒業。元心臓血管外科専門医(循環器科・心臓血管外科)。2003年、徳島県で坂東ハートクリニックを開院。著書に『血圧は下げられる、降圧剤は止められる』など。
※週刊ポスト2021年9月10日号