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平等が招く日本社会の不平等 消費税が格差拡大につながるカラクリ

平等な社会をめざしたがために格差が拡大する現実(イメージ)

平等な社会をめざしたがために格差が拡大する現実(イメージ)

 新型コロナウイルスの感染拡大で広がった経済格差は、ワクチンの接種が進んでも縮まることなく、日に日に深刻化している。弱い立場の人ほど打撃を受ける一方で、裕福な人ほど富を増している状況だ。なぜ、こうした格差が広がってしまうのか。

「本来的に人は平等であるという概念は幻想」と指摘するのは、新刊『平等バカ-原則平等に縛られる日本社会の異常を問う-』(扶桑社新書)を上梓したばかりの、早稲田大学名誉教授・山梨大学名誉教授(生物学者)の池田清彦氏だ。多様性が叫ばれる昨今、「一人ひとりが公平であるべき」という社会の空気感は年々強まっている。だが池田氏は、そこに疑問を投げかける。池田氏は、「平等が正義」という考え方が、かえって不平等な事態を招いているという。

「そもそも『平等』というのは、差別が無くみな等しい状態を指します。これだけを聞けば確かに『平等を守る』ことは最重要であるように思えますよね。しかし、平等が何より優先されることが常に正しいかと言えば、決してそうではありません。

 例えば、東日本大震災の時には被災地に300枚の毛布や野菜が届けられましたが、その避難所にいる500人全員に渡せないのなら一切配らないという判断がなされ、結果全て捨ててしまうといったことが起こっていたそうです。『平等さ』の一点のみが優先された結果、『被災者を支援する』という目的から大きく外れた、非合理極まりない事態に陥っていたのです」(池田氏・以下同)

 日常の中にも、「平等」の裏に潜む不平等が多く存在するという。

「例えば消費税は、国税庁のホームページで『商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税』と説明されています。しかし、消費税に対して不公平感を抱いている人は多いですよね。1000万円の家を買うのがやっとという人にとっての10%と、1億円の家を買える人にとっての10%はまるで重みが違います。家や生活必需品の購入にかかる費用が同じなら、所得の低い人の方が税負担率は高くなるので、現在の消費税が『逆累進性』であるのは間違いありません」

 さらに池田氏は、消費税の使われ方についても指摘する。

「財務省によると、消費税は『年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てる』とされています。仮に福祉のために使われるのなら、巡りめぐって自分に戻ってくる可能性が高いので、不公平感という犠牲を払ったとしても無意味だとは言い切れません。しかし、実際のところ福祉に使っているのは2割以下であり、8割以上は一般財源に組み込まれてその使い道は煙に巻かれ、何に使われているのかは分かりません。国民の多くが反対する中、開催を強行した東京五輪・パラリンピックのために使われた可能性だってあるというわけです」

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