「菅義偉現政権も安倍晋三前政権も、日本の政治では『政治家が説明しない』という問題が長らく指摘され続けてきました。なぜコロナ禍の中でオリンピックを開催するのか、なぜ緊急事態宣言を繰り返し発出したり前倒しで解除したりするのか、場合によっては、政治家は信念のために国民を説得するべき存在であるはずなのに、国民が納得できるしっかりとした説明は全くといってよいほどないですよね。記者会見や国会の質疑応答でマトモに答えないことも日常茶飯事です。いまではすっかり常態化してしまいました。
かつて安倍前首相が東京都議選の応援演説中に、政権に批判的な一部の聴衆に対して“こんな人たち”呼ばわりしたこともありました。しかしながら彼らが落選することはありません。
河野大臣のSNSの使い方をめぐる一件は、第二次安倍政権発足以降野放しにされてきた“説明しない政治家”が、社会に蔓延していることの一つの表れと見ることもできるのではないでしょうか」(西田准教授)
SNSが政治的公共性を持つために必要なこと
河野大臣のTwitterブロック騒動は、“説明しない政治家”を当選させてきた有権者にも原因の一端があるというわけだ。Twitterでのフォロワー数が230万人以上にものぼる河野大臣がSNS上でそうした振る舞いを続ければ、他の政治家にも影響をもたらすことになりはしないだろうか。西田准教授は「こうしたSNSの使い方は河野大臣のオリジナルというわけでもないでしょう」とも指摘する。
「河野大臣のSNSの使い方は、おそらく橋下徹さん的なものに由来していると見ることもできるような気がします。つまりブロックやメンションといったTwitterの機能をフルに活用し、カジュアルな表現を駆使し、積極的にTwitter上で議論を交わし、学者や論客、他党の政治家といった権威を論破し、こき下ろしててみせる。そしてこうしたやり方に支持が集まっているわけです。河野大臣が総裁選に担ぎ上げられていることを見ても、若手政治家たちが注目していると言うことはできますよね。若い世代の政治家のほうがSNSを使いますし、耳目を集める使い方も簡単に学習されていくので、ますます政界に蔓延していくことになると思います。
河野大臣のようなSNSの使い方が好ましいとは思いませんが、ナシと言うこともできません。いろいろな媒体で、人々に伝わる言葉で交流しているともいえるからです。しかも選挙の洗礼を受けていることを踏まえれば、多くの人は河野大臣はこのままでいいと考えているともいえそうです。僕としては、政治家は多くの国民に向けて情報を発信できる環境を保持することが望ましい存在である以上、Twitterでブロックをするような現状のままでいいとは思いませんが」(西田准教授)