検査結果判明前に流通可
産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏はこう言う。
「近年、韓国の消費者は、食品や日用品の安全性に関して“過剰なまでに潔癖”な印象です。しかしこうした風潮は自国の衛生管理を信用していないことの裏返しでもある。同じような商品なら日本製を買う人が多いですから。
韓国の飲食店のなかには、キムチやナムルなど小皿で出す料理の食べ残しを『もったいないから』と次のお客に出す店もあります。行政の指導も年々強化されていますが、それでもたびたび食の衛生問題が報じられて大炎上しています」
日本の検疫に“穴”があることも問題だ。食品の安全に詳しいジャーナリストの小倉正行氏が指摘する。
「2020年度の食品輸入件数235万件のうち検査されたのは20万件。検査率は8.5%です。また、輸入された食品のうち無作為に一部を選んで検査するモニタリング検査は、結果が判明する前に輸入が認められるので、流通して消費されてしまうケースがある」
実際にモニタリング検査で違反事例となった韓国産食品を流通させてしまった輸入業者が言う。
「うちの場合、輸入してから検査結果がわかって厚労省の回収命令が発出されるまでに2週間程度のタイムラグがありました。その間に飲食店に卸して食材として使われてしまった。健康被害はなかったのですが、申し訳ないことをした……」
輸出量が過去最高
韓国産食品の違反事例が相次ぐ背景には、ここ数年の間に起きた世界的な韓流ブームの影響もありそうだ。
2020年に米アカデミー賞を受賞した韓国映画『パラサイト』の世界的ヒットに続き、コロナ禍で動画配信サービスが軒並み会員数を伸ばし、『愛の不時着』などの韓国ドラマが人気を博した。
そうしたエンタメ作品の浸透を通じて韓国の食文化にも注目が集まった結果、昨年の韓国産食品の世界への輸出額は43億ドル(約4700億円)と史上最高を記録した。今年、厚労省に違反を指摘された韓国産食品輸入業者の代表はこう言う。
「当該食品は全部廃棄しました。韓国側の相手先業者は昨年から付き合いを始めたところで、本来なら取引をこれでやめたいところですが、いまは需要も高いし、付き合いを続けざるをえない」