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2021.09.15 15:00  マネーポストWEB

本当にやってよかった?「仮面浪人」を経て志望大学に合格した人たちの事情と本音

「仮面浪人」という選択に後悔はなかったのか?

 第1志望の大学に合格するべく、懸命に受験勉強して入試に臨んでも不合格に終わることがある。その際の選択肢として多いのが、第1志望とは異なる他大学に進学するか、再挑戦するために浪人するか。とはいえ中には、一旦は大学に入学してそこに籍を置きながら、再び志望校合格を目指す「仮面浪人」をする人たちもいる。憧れを捨てきれず、仮面浪人を選んだ人たちの事情とは──。

「就職のことを考えると…」トップ私大に再挑戦

「仮面浪人していなかったら今の私はありません。憧れだった仕事に就くことができたのは、あの時代があったからだったと思っています」

 そう当時を振り返るのは、都内の出版社に勤めるAさん(30代女性)だ。毎年、東大や早慶など難関大合格者を送り出す東京の私立高校出身だが、第1志望の大学には受からず、「練習」として受けた中堅女子大に進学した。

「両親ともに難関私大卒で、兄は難関国立大を卒業。私は高校の授業についていけなかったので、どうせ無理だろうと思って受けた国立大はやっぱり不合格。現役の時には浪人をする気力はなく、入れるならどこでもいいと思って受かった大学に進学しました。ただ、行った大学で高校名を明かす場面になると、同級生には『何があったの……?』と大体イジられました。私の通っていた高校から現役で行く人はほとんどいない大学だったので、意外に思われたんでしょう。

 イジられるのとかはどうでもよかったんですけど、就職を考えた時、やっぱりこの大学だときついだろうな、と思い直して、再受験を決意しました。私はマスコミ系に行きたかったのですが、ただでさえ狭き門なのにその大学では実績がほとんどなく、不安しかありませんでした。そこで、OB・OGが多く豊富な実績がある“上の方”の大学に行くべく、仮面浪人をすることにしたんです」(Aさん)

 幸いにも、親から仮面浪人の理解を得られたAさん。参考書代や受験費用は自分でアルバイトして払うという条件で、覚悟を決めたそうだ。大学での居場所は基本的には図書館で、帰宅後も食事時間以外はずっと勉強していたという。アルバイトがある日は、睡眠時間を削ってまた勉強。そうした生活の中では、当然つらいこともあった。

「万が一、また不合格になった時のためにも単位はとっておきたいので、講義をサボるわけにもいかない。もちろんサークルに入る余裕なんかありません。周りの子たちはデートや合コン、化粧品、ファッションなど大学生らしい会話をする中、『私は何をしているんだろう……』と泣きそうになったこともありました。

 でも、その1年の犠牲を経て、希望していたトップ私大に合格。高校の同級生たちになんとなく抱いていた劣等感を払拭できましたし、そこではゼミやサークルなど充実した学生生活を送ることができました。おかげで自信を持って就活に臨み、憧れの会社にも入ることもできました。当時、仮面浪人を理解してくれた親には感謝でいっぱいです」(Aさん)

「東京の大学に行くために」親に内緒で受験勉強

 仮面浪人は「暗黒時代」と振り返るのは、IT企業で働くBさん(30代男性)だ。「何としても東京に行くこと」。それが仮面浪人時代のモチベーションだったそうだ。地元では名門として知られる公立高校から1浪を経て、近県の中堅国立大に進学したBさんだったが、入学当初から自分の人生の行く末に不安を感じるようになったという。

「地元に帰って役所に入るか、地方銀行に入る感じの人生になるんだろうなと、それ以上の未来が想像できませんでした。その一方で、東京に行った友人は楽しそうで、めちゃくちゃうらやましかった。そこで、東京の難関私大を目指すことに決めました。当時通っていた大学では得られないものが、東京の大学なら得られるはずだと思ったからです。『俺はこの大学で終わるような人間ではない』という謎の自信もありましたね」(Bさん)

 一人暮らしをしていたBさんは、仕送り5万円と奨学金約3万円で、参考書や模試代などの不足分はアルバイトで補っていたという。予備校に行くお金はないので通信講座で勉強。ただ、親には秘密で仮面浪人していた。母親が仕送りを送ってくれた日にかかってくる電話で、『大学生活は楽しい?』といつも聞かれて「心が痛かった」と言う。

「東京に行くとなると一人暮らしのお金もたくさんかかるし、結局1年余分に授業料もかかるので、親には後ろめたかったのですが、不合格だったら“なかったこと”にしようと思い、伝えていませんでした……。合格して報告すると、喜んでくれたので良かったです。入学金は親に借りて月賦で返済。東京ライフを満喫できただけでなく、全国から様々なバックグラウンドを持った面白い人たちが大学にいて、自分の世界が広がりました。気の置けない仲間もできて今も時々会っています。あの時の決断は間違っていなかったと思っています」(Bさん)

オンライン授業の合間を縫って仮面浪人中

 今まさに仮面浪人中の人にも話を聞いた。実家から都内の中堅私大に通う男子大学生・Cさんは、1年間の仮面浪人を経て、今春、現役時に落ちた国立大を受けるも不合格。仮面浪人生活も2年目に突入し「今回こそは」と意気込む。

「幸い、今はオンライン授業がほとんどなので、ラッキーです。家で受験勉強できますから、実質、宅浪です。ただ、仮面浪人1年目は自宅で怠けすぎたのが理由で落ちてしまいました」(Cさん)

 スマホで受験対策動画を見ながら勉強をしているというCさんだが、仮面浪人について、「できれば避けた方がいいと思う」という。なぜなのか。

「落ちた時の“保険”にはなるかもしれませんが、やはり仮面浪人中の大学の授業料はもったいない。同じお金を払うにしても、浪人して予備校に通ったほうが効率的だと思います。大学の授業のことを考えなくていいので、勉強の時間が圧倒的に取れますし、“保険”がある状態だと甘えてしまいます。僕はもう2年生なので、正直『もうこの大学でいいかな』と思って、流されてしまいそうになることもありますが、今回が最後だと思って頑張っているところ。心が揺らいでしまう人には、仮面浪人はおすすめできません」(Cさん)

諦められなかった医師への道

 都内の私立大で仮面浪人しながら、地方国公立大学に進学し直した人もいる。現在産婦人科医として働くDさん(40代女性)は、もともと医学部に行きたかったが、現役時に受けた関東圏にある大学の医学部はすべて不合格。センター試験利用で、滑り止めの都内私立理系大学に合格していたため、一旦そこに入学したものの、医師になるという目標は諦められなかった。浪人ではなく、「仮面浪人」を選択した理由をこう振り返る。

「単純に、『浪人』という何者でもない状態が怖かったんだと思います。東京生まれ東京育ちで、現役の時は地方に行くのはちょっと気が引けたのですが、2年目はそうも言っていられない。医師になってしまえば大学はどこでもいいと割り切りました。

 うちは親が医師でもないし、私大医学部に通えるようなお金はないので、行くなら国公立しかない。ただし期間は1年と決めて、それで無理だったらその時通っていた大学に通い続けようと考えました。なんとなく、浪人すれば受かるものでもない気がしたんです。大学は理系だったので、そこでの授業が受験に役立たないわけでもないと思って、頑張って単位も取っていました」(Dさん)

 見事、1年間の仮面浪人を経て、地方の国公立大学医学部に合格したDさん。Cさんとは異なり、「仮面浪人をしながら再受験するのもいい」という見解を述べる。

「お金の問題もあると思いますが、人によりますよね。浪人のほうが後がない感じで必死になる、という人もいるでしょうが、どこかに在籍していることで安心感が得られ、勉強に集中できる場合もある。入学した後、やっぱり再受験したくなり、休学してもう一度チャレンジするという選択肢もあるでしょう。大事なのは、『あの時ああしていれば……』という後悔をしないためにも、どうしても諦められないようなことや、行きたい大学が出てきた場合、挑戦するかどうかを早い段階で決めることではないかと思います」(Dさん)

 今も、大学に籍を置きながら志望校を目指す「仮面浪人」たちが、人知れず受験勉強に励んでいることだろう。

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