長年連れ添った夫を亡くした綾瀬の母にとって、この集いに参加することはささやかな楽しみだったようだ。
「いつも畑仕事で忙しく、自分のことは後回し。そんなお母さんの姿を見て、その食事会に行くのはいい気分転換になるのではないかと、家族もすすめていたくらいでした」(前出・綾瀬家の知人)
しかし、今年5月、それまで毎月支払われていた配当が止まった。出資者には「B氏の口座がマネーロンダリングの疑惑をかけられ、凍結されたことで、お金が出せなくなった」との説明があったという。出資者には当然、受け入れられない事態である。配当は5月だけでなく、6月、7月、8月とストップし続けている。
母から事情を聞いた綾瀬は驚き、ある人物に相談したという。
「はるかちゃんは、以前から東京でサポートしてもらっている地元出身の顧問税理士に相談しました。実はこの税理士は、A氏の息子なんです。話を聞いた息子は、すぐにA氏を問い詰めた。お母さんと投資グループの契約を解約して、返金を求めました」(前出・綾瀬家の知人)
高齢者を狙った悪質な手口が横行
綾瀬と息子からの「返済要請」を受けたA氏を直撃すると、疲れ切った顔でこう釈明した。
「そもそもこれは投資ではなく『金銭消費貸借契約』という貸付で、最初に預けていただいた資金の元本を返済して、その後に2~4%の『利息』をお渡しする仕組みです。長期間預けることで、やっとプラスが出るんです。だから、投資ではない。私はBさんを信頼し、自信をもって綾瀬さんのお母さんを含む15人ほどに仲介しました。その際、幾分かの手数料をいただいています」
つまり綾瀬の母が受け取った配当はB氏らに「貸付」をしたお金の元本で、その返済を終えてから月3%の利息を配当するとの言い分だ。しかし、「返済」にしろ「利息」にしろ、月々支払われるべきものが止まっているのは事実。出資者から「詐欺」を疑う声があがっていることをA氏に伝えると、苦渋の表情でこう言葉を絞り出した。
「これがもし詐欺だったら、私も加担したことになります。その場合、私が紹介した人には全財産をはたいてでも必ず返済します。でも、私はBさんを信じています。Bさんからは、2億円以上の残高がある預金口座と、50億円以上の株の運用記録を見せてもらっています。ただ、直接連絡はできないんです。おかしいなとは思っているのですが……」