「異種混合」という選択肢
いずれ3回目のワクチン接種は必要になる。問題は「どのワクチン」を打つかだ。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎医師が指摘する。
「現時点では、アメリカでもそうであるように3回目も同じメーカーのワクチン接種が基本だと考えられます。すでにファイザーやモデルナでは、3回目接種の安全性やデルタ株などの変異株に対する有効性が報告されている。副反応についても、1回目に比べて2回目の副反応が強い傾向がありますが、3回目はそれを上回るようなことはないという報告もあります」
一方で、3回目の接種では、異なるメーカーのワクチンを打つという選択肢もある。
イギリスではワクチンの3回目接種で、異なるメーカーのワクチンを打つ準備が進められている。
最初の2回接種とは違うメーカーのワクチンを3回目に接種することで、新型コロナの予防効果が高まるという理由からで、英政府は専門家の委員会の勧告を待って、最終決定を下すという。
「英オックスフォード大学の研究チームは、アストラゼネカ製とファイザー製の異種混合接種をすれば、アストラゼネカ製を2回連続して接種したときより、さらに強力な免疫反応が形成されるという研究結果を報告しました。日本でも治験の結果がよければ、年に一度程度の追加接種はそれまでとは異なるワクチンを打つという選択肢も広がるでしょう」(角田さん)
実際、田村憲久厚生労働相は14日の記者会見で、新型コロナワクチンの3回目接種や、異なる種類のワクチンを打つ異種混合接種について、17日の審議会で検討を始めるとし、「結論はなるべく早く出していきたい」と語った。
大半の日本人にとって、1回目、2回目に打ちうるワクチンメーカーの選択肢は、米ファイザー製か米モデルナ製しかなかった。自治体で申し込んだ人はファイザー製で、大規模接種会場や職域接種で打った人はモデルナ製。選ぶ余地はほぼなかったと言っていい。
しかし、この8月後半からは英アストラゼネカ製の接種が大阪や北海道でスタート。来年初頭からは米ノババックス製のワクチンが1億5000万回分供給される予定だ。
さらに、日本の医薬品メーカーが作るワクチン、いわば“国産ワクチン”も早ければ来年3月までに実用化される。
どのメーカーでも打っていいとなれば、半年後の来春ぐらいには4~5社の中から「選べる」状況になるのだ。
ひと口にワクチンといっても、さまざまなタイプがある。
日本で接種が進んでいるファイザー製とモデルナ製のワクチンは「mRNAワクチン」と呼ばれ、ウイルスの遺伝子情報を体に打ち込んで免疫反応を引き起こす「抗原」を作らせるしくみだ。
アストラゼネカ製のワクチンは人体に無害なウイルスを“運び屋(ベクター)”に使い、新型コロナのスパイクたんぱく質(コロナウイルスのトゲトゲの部分)の遺伝情報をヒトの細胞へと運ぶもの。ベクターを介して細胞の中に入れた遺伝子によって免疫が作られることから「ウイルスベクターワクチン」と称される。