ネパールでも歴代興行成績1位となったインド映画『バーフバリ2』。苦難に遭うとはいえ親ガチャは成功している王子バーフバリの物語(The Times of India)

ネパールでも歴代興行成績1位となったインド映画『バーフバリ2』。苦難に遭うとはいえ親ガチャは成功している王子バーフバリの物語(The Times of India)

「お金ないから弱い」

 国ガチャで言うなら、MLBの大谷翔平選手がネパールに生まれたならどうだろう。クリケットでいけそうだが、ネパールではスポーツ選手になれるくらいなら軍人、肉弾エリートなら傭兵として海外で稼いだほうがいい。漫画のような話だが現実だ。国ガチャは間違いなくある。同時に「時代ガチャ」もあるかもしれない。大谷選手は時代ガチャを外したなら沢村栄治のように最前線で手榴弾を投げ続け、雷撃を受けて輸送船とともに命を落としたかもしれない。大谷選手は現在27歳、沢村はその27歳で死んだ。時代ガチャも確実にある。

お金持ちに生まれるのはラッキーね。ネパール人もそう

「日本はいい国よ、元気出して」

 こんな質問をするので私がガチャを外した=不遇の人だと悲観しているように思われてしまったらしい。「元気だして」とドジョーも眉をハの字に心配してくれる。なんだか納得いかないが、今度は国ガチャでなく「親ガチャ」のことも聞いてみる。ただしストレートに「自分の親は外れと思うか」なんて外国の人に聞くのはまず無理、日本人に多いとされる自己卑下的帰属(いい面も悪い面もある)は他国の人に当てはまらないことが多い。なので「ご両親は素晴らしい人でしょうね」といった肯定を含んだニュアンスで聞いてみる。

 すると「お母さん凄い人、大好きよ」「パパは自分で家を建てた」と二人から矢継ぎ早に親自慢が繰り出される。ちなみにバーフバリのパパは川エビ獲りの名人だという。なんだろう、日本人は親を面と向かって自慢しないが、外国の人は言葉の限りを尽くして誇る。素敵だ。文化の違いもあるのだろうが、国会全体の貧困というリアルに比べ、日本人は他者との相対的幸福に苦しむのかもしれない。日本人の幸福度ランキング(ランキングそのものの是非は置く)は世界56位、両国には失礼かもしれないがコソボやウズベキスタンより低い。

「でもお金持ちに生まれるのはラッキー。ネパール人もそう」

 なるほど、国ガチャが外れても親ガチャが外れなければ大当たりだ。途上国だって全員が貧しいわけではない。ネパールも主に中国との取引で成功した富裕層が出現し始めている。格差は歴然、彼らの子どもはかつての宗主国、イギリスの名門大学に留学する。ネパールも金持ちは日本と同じか、むしろ日本のその辺の成金より名誉も富もある。そんな家に生まれたネパール人は国ガチャ失敗でも親ガチャは大成功、日本で生まれて国ガチャ(あくまで途上国との相対的な意)成功でも、貧乏な親に虐待され続け祖父母の介護をするヤングケアラーなら「気にすんな、国ガチャは当たりだよ!」と言われても納得し辛いだろう。

「(国も親も)選べない、しょうがない」

 哀れみの大きな瞳でバーフバリに諭される。善意を無下にはできないのでガチャに嘆く中年としてしょんぼりうなずくことにする。しかしバーフバリの言うことはもっともな話で、出生ばかりは個人の意思ではどうにもならない。まさしく「天道是か非か」である。「赤ちゃんは自分で生まれる親を決めるんだよ」なんて薄気味悪いカルトが跋扈しているが、筆者も「お前の乾癬はお母さんの子宮の中でお前が選んだんだよ」なんて言われても納得できない。国でも親でも「ガチャ論」はどうにもならないというディレンマはもちろん、そんな運命論を正当化しようとする、ガチャの確率を下げようとする邪悪な上位者、詐話師に対するルサンチマンも込められているように思う。

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