コロナ禍で変容した「宿泊」の概念

 これまで多様なサービスを提供してきたホテルにとって、コロナ禍がもたらした試練は新たな施策を生み出す契機にもなった。宿泊以外のサービスについて需用がまったく期待できない中にあって、何らかのアイディアで活路を見いだそうというムードを生み出したのだ。そこで起きたのが、「宿泊という概念を根本から問い直してみる」という発想の転換だった。

 宿泊といえば、ホテル側の都合であらかじめ決めた時間内(チェックイン、チェックアウト)での利用が前提となる。もちろん清掃時間をはじめルームアサインの段取りなど、ホテル側の一貫したルールがなければスムーズな客室提供は不可能であることは容易に想像できる。そして、ゲストもそれを当然のこととして受け入れてきた。

 しかし、こうした常識(ルール)はホテルが想定する客室稼働率を前提としたもので、コロナ禍で見られたように相当低調な稼働率が続けば、ホテル側も自らの決めた時間帯に縛られていてはますます経営が苦しくなる。そこで出てきたのが、長期滞在のサービスだったというわけだ。ステイホームや在宅勤務が推奨される中で、日中の時間帯にホテルの客室を使用して仕事をするという人も増えた。

 また、外出や旅行が自粛されても、いまやベテランの域ともいえる消毒、殺菌に対するホテル側の徹底した対策により、ホテルに宿泊する(客室にステイする)こと自体の安全性は証明されてきた1年強といえるだろう。

 緊急事態宣言が明けてもまだ元通りの稼働率というわけにはいかないホテルも多いだろう。コロナ禍で宿泊という概念が大きく変容してきた中、今後もこれまでの常識が通用しないような新たな宿泊プランや予約チャネル、サービスが続々と登場してくるかもしれない。

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