天竜浜名湖鉄道・天竜二俣駅の転車台と扇形車庫。いずれも国の登録有形文化財に指定されている(時事通信フォト)

天竜浜名湖鉄道・天竜二俣駅の転車台と扇形車庫。いずれも国の登録有形文化財に指定されている(時事通信フォト)

事業規模よりも資本金が大きくなりがちな鉄道会社

 減資によって中小企業化した鉄道事業者は、北九州高速鉄道だけではない。静岡県浜松市の新所原駅と掛川市の掛川駅を結ぶ天竜浜名湖鉄道は、2016年に資本金を6億3000万円から1億円へと減資している。

「鉄道会社は駅舎・車両・線路など固定資産を多く抱えます。そのため、おのずと資本金が積み上がります。つまり、事業の実態よりも資本金が大きくなりがちです。資本金が膨れて税負担が過大になれば、鉄道事業が立ち行かなくなります。そうした理由から減資をしました」と話すのは天竜浜名湖鉄道の担当者だ。

 北九州高速鉄道の担当者は、「事業規模を合わせるためのもので、税負担の軽減が目的ではない」と言ったが、天竜浜名湖鉄道の担当者は「事業規模が大きくなりすぎてしまい、税負担が大きくなってしまった。事業規模に合わせた税負担にするために減資した」と口にする。

 両者の捉え方は異なるが、どちらも「鉄道会社は事業規模が自然と大きくなるため、それに伴って資本金が積み上がってしまう。だから、企業規模に比例して税負担が分不相応に重くなる」といった問題意識は共通している。

生き残り策を模索する地方鉄道

 各地の鉄道会社では、コロナ禍以前から「事業規模が大きくなり過ぎているのではないか?」という認識が広まっていた。

 前述したように、鉄道会社は駅舎・車両・線路など固定資産を多く抱える。どうしても資本金は積み上がり、それに比例して税負担が大きくなる。埼玉高速鉄道も2015年に固定資産を減損処理し、同時に資本金を1億円へと減資した。

 固定資産を減損処理するのではなく、上下分離することで経営改善を図ろうとする鉄道会社もある。

 上下分離とは、インフラの所有・維持・管理と事業の運行を別々に切り離すことで負担を軽減しようというもの。上下分離は、鉄道だけではなく空港や道路などの交通インフラでも導入されている。

 鉄道で例えるなら、駅舎・車両・線路といった固定資産を自治体の所有物にすることで税負担などを軽減。鉄道会社は、自治体が保有する施設や土地に賃料を払って列車を運行するといった仕組みだ。上下分離を採用すれば、鉄道会社は賃料を払うことになるが資産を保有しなくて済む。固定資産分の税負担は軽減される。運行頻度の低いローカル線では、賃料を払う方が経済的になるのだ。

 滋賀県の近江鉄道は苦しい経営が続き、廃線も取り沙汰されていた。滋賀県や沿線自治体は存続させることで合意し、近江鉄道の負担軽減策として2024年から上下分離を導入することを決めた。

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