「年配の上司は、こんなに便利なものはないと笑っていましたが、SNSを日常的に使っている側からすると、気持ち悪いとしか思えません。でも、学生気分でおふざけの投稿をしたところで、それが犯罪でなければ神経質になりすぎる必要もないと思います。むしろ、素性を隠して色々な投稿をしている人の方が怖い」(島さん)
日本でのSNS利用状況をみると、全体で73.8%、20~29歳は90.4%にのぼる(総務省「通信利用動向調査」調べ)。使っていない方が珍しく、あまりに身近なものだからか、利用者は、それが世界から見られるものであることを忘れがちだ。企業による新入社員のネガティブチェックなどは、それを実感できる貴重な機会だろう。チェックされた側にとっては「気持ち悪い」ものだかもしれないが、公開情報をもとに合法的に「分析」しているので、罪に問うのは難しい。倫理的には判断が分かれる部分もある。
見られて分析されることが気持ち悪くても、いまさらSNSをすべて止めてしまうのは難しいだろう。たとえネット空間であれ、そこは利用者にとってのリアルだからだ。
企業は志望者の「囲い込み」だけに止まらず、粛々と「SNS情報」を収集し、採用だけでなく業務にも役立てている。大企業のほとんどは、こうしたSNSチェックツールを導入し、自社に関してネガティブな情報が出ていないか確認し、マーケティングにも利用しているのであるが、いちいちそれを表明することはない。これを、ほとんどの市民が「当然のことだよね」と思う日が来るのか、新しいルールが求められて利用の制限が求められるのか。知らぬ間に利用されているというのが、もっとも避けたいところだ。