コラム

そごう、ポラロイド、マイカル… “倒産”に至った有名企業はどこで道を間違えた?

『世界「倒産」図鑑 波乱万丈25社でわかる失敗の理由』荒木 博行 日経BP

 突然だが、「倒産」と聞いてどのようなイメージがわくだろうか。経営者の責任問題、路頭に迷う社員とその家族たち、混乱する消費者……。企業の倒産によって巻き起こる影響の数々は、いずれもネガティブな印象ばかりのはずだ。

 一方で「なぜ倒産に至ったのか」という観点から、経営戦略を見直すきっかけとして学ぶべき点は多い。そんな企業の倒産に注目し、日米欧の事例を徹底分析したのが今回ご紹介する荒木博行氏の著書『世界「倒産」図鑑 波乱万丈25社でわかる失敗の理由』(日経BP)。

「この書籍では、それぞれ倒産した事例について『どういう企業だったのか』『なぜ倒産したのか』『どこで間違えたのか』『私たちは何を学ぶべきなのか』といった項目に分けて考察を深めています。(中略)このような失敗事例を、先人たちから私たちへのメッセージと捉え、今日を生きる私たちの意味合いをまとめています」(本書より)

 まずは「戦略上の問題」編から、「過去の亡霊」型について見てみよう。本書における過去の亡霊型とは、”成功体験が強すぎて、そこから抜け出せずに変わる決断ができない”こと。たとえば百貨店業界のイノベーター「そごう」は水島廣雄社長時代、千葉そごうを独立法人化して出店するという奇策を機に日本全国へ出店。その成功がビジネスモデルとなり、バブル崩壊まで約20年もそごうを支えたという。

 荒木氏はそごうの倒産理由について「乱暴な言い方」と前置きしつつ、こう綴った。

「千葉そごう以降の20年間は、水島社長が出店場所とタイミングさえ決めればよかったのです。水島社長を妄信し、意見をせずにひたすら指示をこなす。20年もの間、つまり新人として入社した社員が40歳を過ぎるタイミングという長期間、そういった状況に慣らされていた社員たちは、現状を疑い、建設的に議論する力を培う機会がありませんでした」(本書より)

 バブル崩壊という大きな転換点があったとはいえ、活発な議論もなく”現状維持”を続けていれば、遅かれ早かれ同じ結末を迎えていたのかもしれない。

「過去の亡霊」型で”分析体質”が行き過ぎて倒産してしまったのは、エドウィン・H・ランドの設立した「ポラロイド」。1947年に初代インスタントカメラを発表した企業だが、ランドが去ってからは新体制の元で徐々に崩壊へ向かったという。

 ポラロイドは一体どこで経営を見誤ってしまったのか。その答えは、現在の生活にもなじみ深い”デジタル技術”への転換。せっかくデジタル製品をローンチする準備までできていながら二の足を踏んでしまい、デジタル化の波が表面化した際に置き去りとなってしまったのだ。なんとも皮肉めいたエピソードだが、そんな結果を踏まえて荒木氏は以下のように指摘した。

「ポラロイドは『分析』にこだわるのではなく、失敗を前提とした『学習』に意識を向けるべきだったのでしょう。つまり、新たな技術を一旦世に出した上で、市場の可能性を学習していく、という姿勢です」(本書より)

 続いては「マネジメントの問題」編の「大雑把」型(マネジメントがアバウト・雑過ぎる)から、風呂敷を畳みきれずに倒産した「マイカル」の事例を紹介したい。マイカルといえば未来都市・マイカルタウン構想に基づき、スーパーとは全く次元の異なる巨大商業施設「マイカル本牧」を1989年に出店。バブル崩壊後も矢継ぎ早に各地への出店投資を続けた経緯がある。

 ”未来都市”を打ち出すとはなんとも豪快だが、残念ながら1990年代後半には”店舗は広い割に買いたいものがない”という状況に……。荒木氏いわく当時の消費者は”安くていいもの”を求めていたのに対し、マイカルは”量より質”に向かってしまったという。

 それにしても気になるのは、店舗の大型化を計ったのはマイカルだけではないという点だ。なぜマイカルは敗者となってしまったのだろう。

「例えば、ヨーカ堂においては、仮説検証を繰り返しながら、商品数の絞り込みと販売量の確保にこだわってきました。ジャスコにおいては、デフレニーズを踏まえて、圧倒的な低価格販売にこだわり、現場レベルで『どこよりも安い』というブランドイメージの形成に努めてきたわけです。

しかし、マイカルは、日本の高度成長時代に形成された『置けば売れる』という成功体験に基づく大雑把な販売手法から抜け切れませんでした」(本書より)

 ビジネスの世界ではいつ経営が傾いてもおかしくはなく、たとえ成功を手にした企業でも倒産という道は容易に避けられるものではない。先行きが不透明な現代だからこそ過去の失敗事例に学び、先見性と柔軟な発想力を養いたいものだ。

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