女性専用車両の導入がすすむなど、弱者は泣き寝入りして当然という風潮は薄れているはずだが……(Lehtikuva/時事通信フォト)

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スーツ姿の小さいおじさんがぶつかってきた

「コロナの前だけど、ゴミの回収をしている時かな、後ろからドーンさ。去り際に俺を見て笑ったからね、わざとだろうよ」

 その男はゴミを捨てるでなく、ただ単にぶつかったという。お尻の横からだったので危うく転倒しそうになったが、それ以上に怖かったという。

「笑ってんだぜ、怖いだろ。それもサラリーマンだ。普通に背広来て、斜めがけのでかいバック持った小太りで薄毛のサラリーマンだよ」

 頭部がかなり薄かったので同い年くらいかと思ったが顔はまだ若かったという。

「50代くらいかね、聞いたわけじゃないからわかんないけど若くはなかったよ。とにかく頭が薄かった、毛沢東みたいな」

 まさしく「ぶつかりおじさん」ということか。世代もあるのだろうが毛沢東という例えは実に特徴的な気もするが、それでも都会の駅で再度会ったとしてもわからない、ましてラッシュの時期ならなおさらだろう。

「朝夕のラッシュがほとんどだね、混雑にまぎれてやるんだろう。手摺り拭きとかでもやられた。邪魔って感じでね。ただコロナで大騒ぎの時期は少なかったよ」

 自分が被害に遭わずともコロナ以前は見かけたという「ぶつかりおじさん」の被害、実際に女性からの申し出で駅員を呼んだこともあるそうだが、コロナ禍の緊急事態宣言下では見なかったと語る。10月に入り緊急事態宣言解除、コロナ以前ほどでないにせよ満員電車や駅の混雑が復活してからまた増えたのではないか、とのことで、それは先の女性のメールと同様である。しかしコロナ禍の2020年7月には蒲田で45歳の派遣社員のおじさんが暴行容疑で逮捕されている。もちろんぶつかり女もいるかもしれないが、残念ながら圧倒的に多いのは中高年男性、JRも啓発物などで自制、自省を呼びかけている始末だ。

「マスクで顔が分かりづらいのもあるのかもね、実際わかんないし」

 車のあおり運転同様の匿名性だろうか、確かにマスクも匿名性を増す道具かもしれない。また痴漢ついでというおじさんもいるという。実際、先の45歳はぶつかった時の感触、とくに「胸の感触が忘れられなかった」と供述している。

「国立駅に行けばいますよ」
 
 ずばり、筆者の知人で塾講師をしている女性が教えてくれた。この「ぶつかりおじさん」の件に関して通勤している男女を対象にメッセンジャーを投げてみたが、具体的な駅名がバンバン出てくる。その中でもJR国立駅は民度の高いイメージだったので意外だった。

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