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店主夫妻の人柄と手作り料理が温かい 「唯一無二」と愛される東大阪の角打ち

「人生の岐路で出会った店。失業中にふらりとこの店に立ち寄ったのが縁で、大将(店主)に仕事まで決めてもらったんよ」(50代)と、木目調の落ち着く店内で常連客が笑顔で酒を傾ける。

「お客さんも人生いろいろやね。こうやって巡り巡って出会えるのはうれしいね」と語るのは、『岩崎酒店』の3代目店主・の岩崎安裕さん(64歳)。

 近鉄奈良線・布施駅を挟んで南北に伸びる布施商店街。

「ここは東大阪イチの繁華街やね。商売の神、えべっさん(布施戎神社)もあるし、回転寿司発祥の地ともいわれてます」と語る店主は、昭和の面影が残るこの商店街の一角で、長年地元客に寄り添ってきた。

角打ちスペースは木目調が落ち着く昭和の空間

角打ちスペースは木目調が落ち着く昭和の空間

 妻の弘美さん(64歳)が腕を振るう料理が評判だ。

 酒屋の店舗とは別の入り口を設けた角打ち空間は、年季の入った換気扇が静かに回り、特製だしのいい香りが立ち込める。

「味の染みた筑前煮が最高や。肉厚のしいたけと立派な鶏肉、おかん(弘美さん)の愛情も入ってん。家がすぐそこ。べろんべろんになってもな、ほうてでも(這ってでも)帰れる場所やから、毎日来とる」(40代、飲食業)

「菊菜(春菊)に熱々のおでんだしかけてな、これがごっつ旨い。おれは独身貴族やからね。こういう料理は身も心も温まる。この店で温かいご飯食べたくて、仕事帰りは毎日ここへ直行しとんねん」(60代、設計業)。

 テーブルには、温かいつまみの皿と空になった酒の缶が並んでいき、常連さんが訪れるたびに「乾杯」となり、和気藹々と宴は続く。

筑前煮など和の味わいを辛口の焼酎ハイボールが引き立てる

筑前煮など和の味わいを辛口の焼酎ハイボールが引き立てる

「落ち着いて飲める、味わい深い店やな。料理も旨いけど、店主夫妻の人柄が温かいよね。ご飯食べに行ったり、カラオケ行ったりな、店と客の関係を超えて付きおうてもらってます」(60代)

 地元客に慕われる店主夫妻は今年で結婚40年目、二人三脚で店を続けてきた。

「主人と出会ったのは二十歳(はたち)くらいのころかな。バスケットの試合見に行ったときなんですよ」と、パタパタと手際よく料理を仕込みながら弘美さんは目尻を下げる。

 店主夫妻が結婚したのは、チャールズ皇太子ご成婚の年(昭和56年)。

「あっち(酒屋)にチャールズ皇太子とダイアナ妃(当時)のご成婚記念ボトルも飾ってあるんですよ」(店主)「酒屋は戦前(昭和10年)に先々代が開業して、昭和28年ごろから角打ちを始めたんです。料理の仕込みは、祖母から母、妻が受け継いでくれた。毎日朝から仕込みをしてな、大変ですよ。昔は酒屋だけでは立ち行かないこともあったから、苦労もかけてきたよね」(店主)

「一緒に店やってきてよかったのは、こうしてお客さんと楽しく会話できることと、たくさんの人に知り合えたことですよね」(弘美さん)

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