アルゼンチンでは、2021年5月、国内の牛肉価格抑制のために輸出を30日間停止した。ブエノスアイレスにある肉屋の牛肉(AFP=時事)

アルゼンチンでは、2021年5月、国内の牛肉価格抑制のために輸出を30日間停止した。ブエノスアイレスにある肉屋の牛肉(AFP=時事)

中国を上回る金を出せない日本は買い負け続き

「深刻なのが食肉です。とくに牛肉がやばい。報道よりずっと深刻です。アメリカやオーストラリアの食肉工場がフル回転しても日本の分が足りない。昨年までアメリカの肉は安定的に買えた。むしろオーストラリアよりアメリカでした。今年に入って急激に中国がこの日本のルートにも手を突っ込んできた」

 オーストラリアの牛肉は、コロナはもちろん干ばつと森林火災で大打撃を受けたため、日本の商社はアメリカの比重を高めた。元々日本の輸入牛肉は90%以上が米国産と豪州産、アメリカ産牛肉は3月にはその輸入増から日本政府が緊急輸入制限措置、いわゆるセーフガードを発動するほどだったのに半年たらずで一転、買い負ける事態となった。

「中国の食肉輸入は米国産や豪州産より少し肉のランクが落ちる(とされる)ブラジルやアルゼンチンといった南米が中心でしたが、いまやアメリカの牛肉市場にも積極的に介入しています。ただでさえアメリカ国内の食肉需要で高騰してるのにね」

 かつての中国の一般家庭の食肉は豚や鳥が中心、牛肉は昔の日本のように高級品だったが、中国の経済発展と急激な富の増大により牛肉を求めるようになった。それを象徴するかのように中国国内は空前の焼き肉ブームでもある。中国はオーストラリアと一時険悪になったが、それもアメリカ産牛肉に向かうきっかけとなった。

「中国がアルゼンチンの牛肉を買い占めたので、アルゼンチン国内の牛肉が高騰しました。主食ってくらい肉を消費する南米で牛肉が食べられないなんて一大事です。それでも儲かるからとアルゼンチンの食肉業者が中国に売ってしまう。まだ足りないと中国はアメリカ産も買い占める。中国を上回る金を出せない日本は買い負け続けているのです」

 シンプルな話、日本が中国より高い金を出せばこんなことにはならない。出せない日本が中国に負ける。実際、一部では日本も負けじと高級食材を中心に「買い勝ち」もしている。また穀物などは日本の商社のお家芸、世界を牛耳る五大穀物メジャーを相手に善戦している。どの国も必死、なぜならスポーツやゲームのように勝った負けたで済まされない、一人ひとりの生活に直結するどころか国の危機にもなりかねないからだ。

「それだけではありません。日本に食料を運ぶ船も他国、とくに中国に取られてます。取り負けですね」

 細かいことにやかましくて金の安い日本の荷主なんかより、金をたくさんくれる中国ということか。

「それもありますけど他にも事情はあります。海運はルートが重要なんですが、アメリカと中国のルートが一番儲かるからそのルートでばかり運びたがる、日本には寄りたくないし、寄ると割高になるから嫌がるんです。人件費の高騰や原油高もあって効率のいいルートにしたいでしょうからね、もちろん日本の荷主がシブチンなのもありますが」

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