アルツハイマー型認知症治療薬として10年前に登場したメマリーにも新たな副作用が追加された(2020年6月)。同薬は発売以降、「肝機能障害」や「黄疸」「横紋筋融解症」などの副作用が追加されてきたが、今回は「完全房室ブロック」「徐脈性不整脈」が新たに加わった。
「“お守り代わり”に飲む人もいますが、認知症薬は実際に効果が見えにくいものです。副作用に追加された徐脈性不整脈では脈が遅くなり、安静時でもめまいや息切れを起こします。高齢で心臓に持病のある方ほどリスクが大きいので気をつけてほしい」(谷本医師)
これからの季節に注意したいのが、2018年に発売された抗インフルエンザ薬のゾフルーザだ。新たに追加された副作用は「虚血性大腸炎」。
「大腸への血流が阻害され、腹痛や血便が症状として現われます。ウイルスに作用するゾフルーザは、大腸内にもともとあるウイルスに作用して腸内バランスが崩れ、大腸菌などの異常繁殖により感染症を起こしてしまう可能性がある」(長澤氏)
服用が1回で済むゾフルーザは使い勝手がよいが、虚血性大腸炎は高齢者に多く見られるため、「安易に服用せずリスクの存在も念頭に置いてほしい」(谷本医師)という。
製薬会社も「新たな副作用を早く伝えたい」
また、リストには抗がん薬も多く掲載されているが、これは薬の特性によるものだという。
「抗がん剤は副作用が出る前提で使われるものです。抗がん剤の治療関連死亡は珍しくなく、1%はあると言われる。そのため副作用の管理はとても大事で、使用開始前は患者さんに対して副作用で命の危険もあると説明します。もちろん、新たに追加された副作用についても、迅速にきちんと説明します」(谷本医師)
たとえば皮膚がんや肺がんの治療薬として使われる分子標的薬のオプジーボ(一般名ニボルマブ)は、この3年で「下垂体機能障害」「劇症肝炎」「発熱性好中球減少症」が数度にわたり追加された。
「劇症肝炎は薬を代謝する肝臓で炎症が起こり、肝機能が急激に低下して意識障害に陥り、最悪死に至る症状です。死亡率が高く、今回も18症例中10例が死亡しています。
オプジーボに限らず、抗がん剤は後から重大な副作用が追加されることが多いですが、末期がん患者であれば、命に関わる副作用の可能性があるとわかっていても抗がん剤の使用を中止することができないのが難しいところです」(長澤氏)