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心に刻んでおきたい瀬戸内寂聴さん「おじさんの魂を救ってくれる言葉」

さまざまな経験をもつ

著作は400冊を超える

 波乱に満ち、熱情にあふれ、そして多くの人々を支え続けた人生だった。瀬戸内寂聴さん死去の報にコラムニスト・石原壮一郎氏が綴る。

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「愛した、書いた、祈った」

 9日に99歳で亡くなった作家で尼僧の瀬戸内寂聴さん。名誉住職を務める岩手・天台寺に自分で購入していた墓石には、こう刻むと決めていたとか。まさに、この言葉がぴったりの波乱万丈で情熱に満ちた人生を送りました。

 作家としての功績は言うまでもありませんが、忘れてはいけないのが、法話や著書を通してたくさんの悩みに答え、迷える子羊を救ってきたこと。誰にも真似できない濃密な人生経験に基づいた忌憚のない回答は、読者の心を激しく揺さぶりました。

 何を隠そう人生相談本コレクターである私の本棚には、寂聴さんが悩みに答えている本が多数あります。そこから「おじさんが心に刻んでおきたい、おじさんの魂を救ってくれる言葉」を探してみました。

 まずは【会社が自分を評価してくれません】という40代男性からの相談。勤めて11年になるが、上司に恵まれず、評価もされず、毎日悶々と暮らしているとか。寂聴さんは、かつて「子宮作家」「エロ作家」といったレッテルを貼られた自らの悔しい体験を語りつつ、こうアドバイスします。

〈(自分も)そういわれた当初はたしかに傷つきもし、腹も立ちましたが、しかし私は小説を書きたくて書いているのであって、世間から褒められたくて小説を書いているわけではないと思い直してからは、そういう無責任な批評は気にならなくなりました。(中略)幸い、あなたには支えになってくれる優しい奥さんがおられるのだし、仕事に使命感を持ってもおられるようですから、馬鹿な上司の評価などは気にせず、自分に与えられた仕事を淡々とおやりなさい〉(集英社インターナショナル『寂聴辻説法』2010年刊)

 さらに「そうやってやり過ごしていけば、私のようにいつか風向きが変わる日も来るのではないでしょうか」とも。おじさんの大多数は同じ悩みを抱えていますが、他人の評価に一喜一憂することの無意味さや虚しさを教えてくれています。

 2つ目は【浮気を責められ地獄の境地です…】という46歳男性からの相談。「たった一度の浮気を女房に責められ、子供たちからも白い目で見られ、地獄の境地です」とのこと。寂聴さんは、あきらめずに話し合うことを勧めつつ、こうアドバイスします。

〈でも私には、あなたがそんなに後悔しているのに奥さんが許さないというのも、ずいぶん頑固な情のこわい人だと思えます。でもここのところは、奥さんの欠点などは一切目をつぶってひたすら誠意を見せて謝りなさい。それも別れると言い張るなら、そんな女、別れてしまいなさい〉(文化出版局『寂聴相談室 人生道しるべ』2000年刊)

 こっちに非があるからといって、際限なく非難してくる相手も相手である――。卑屈になり過ぎず、そのぐらいのスタンスでぶつかるべしと寂聴さんは励ましてくれています。「誠意を見せてもダメなら諦めよう」と腹を括ることでしか、事態は前に進みません。

 続いては【借金苦の兄に泣かされ続けて】という44歳男性からの相談。今まで何度も貸しているけど、一度も返してくれたことはないとか。「また五十万貸してくれと頼まれています」と悩む相談者に、寂聴さんは「貸さずに、(無理のない額を)あげるんです」と言います。一般論として、お金を貸すと人間関係は必ず壊れるとも。

〈目の前に苦しんでいる人がいれば(中略)、思わず手を出して助けるじゃありませんか。そういう気持ちでお金を出すならいい。でも、それができないなら、「してあげる」と偉そうなことをいわないで、「私はできない。私はそれもできないだめな人間です」と引っ込めばいいんです〉(NHK出版『瀬戸内寂聴の人生相談』2002年刊)

 つい「いいカッコ」してしまうのがおじさんのサガ。無理に背伸びをすると、自分の首を絞めることになります。「引き下がる勇気」の大切さを胸に刻みましょう。

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