“下流老人”といった言葉が流行語になったことからもわかるように、困窮する高齢者への支援は必要だと考えられる。コロナによって年金収入が減ることは基本的にないが、コロナで失業した息子や娘を支援しなくてはならなくなった年金受給世代も少なくないだろう。ただ、「住民税非課税世帯への10万円給付」と掲げた時に、生活に苦しむ人に幅広く給付が行き渡るというイメージを抱くのとは裏腹に、現役世代で年収100万~200万円程度のワーキングプア層には支援が行き届かない可能性があるのだ。そうした世帯に子供がいなければ、18歳以下への10万円相当給付も受け取れない。
所得制限を設けたり、現金給付とクーポン給付を分けたりと、細切れで複雑化することで、給付のためにかかる事務費が膨れあがるという指摘も出ている。住民税非課税世帯への10万円給付のために、新たに854億円の事務費がかかることも判明した。「複雑にした挙げ句、必要な人に支援が届かず、事務費も膨れあがるというのであれば、全国民への一律給付のほうがよっぽどシンプルで効果があるのでは」(同前)という声が出てくるのは、ある意味、当然のことかもしれない。