Aは警察の取り調べに素直に応じているようだが、警察は殺害の動機をいまだ断定できずにいる。Aの伊藤くんに関する供述が、「どれも、直接的に動機には結びつかない」というのだ。
確かに、トラブルといっても、強烈な殺意を抱くようなものとは考えにくい。
社会心理学が専門の新潟青陵大学大学院教授・碓井真史さんが分析する。
「考えられるものとして、この生徒が被害者意識を持ちやすいタイプだった可能性があります。こうした心理的特徴の子供はどこかで問題が発生すると、その原因を過去に求める傾向が強い。“自分がいま困っているのは、あのとき、あの子がこうしたから”と怒りが逆戻りして、無理やりにでも関連付けてしまう。
いま、うまくいかないのはすべてあの子のせいだと思い込み、殺すしかない、と最悪の考えに発展させてしまうのです。これは、心理的視野狭窄といわれ、極端な答えを導き出してしまうほど狭い思考状態を指します」
些細なことで被害者意識を募らせたAは、最悪の加害者に豹変してしまったのだろうか。
※女性セブン2021年12月16日号