物語は、横浜での震度6の巨大地震から始まる。原作小説にも『希望のひと』にも登場する地球物理学者・田所博士は、この地震から日本沈没の危険性を察知する。対策に奔走するのは2人の若者。船舶会社に勤める技術者・小野寺俊夫と、国際政治学者のショーン渡だ。
原作小説の設定を引き継ぐ小野寺は、潜水艇「しんかい6500」に乗り、田所博士を連れて海底を調査。日本列島が「2年以内」に沈没する可能性が示唆される。政府に対策を提言するショーンは『1999』独自の登場人物であり、『希望のひと』で小栗旬、松山ケンイチが演じた若手官僚にも重なる役回りだ。
「映画をやるにあたって原作を読んだ時、テーマは『国土を失った時に国民はどうなるか』なんだと思った。だから、沈没後の日本人にだいぶ重きを置いて第1稿を仕上げました」(大森氏)
その内容を要約するとこうなる。
沈没のリミットである「2年以内」に1億2000万人の国民を海外へ脱出させるために、時の首相・神崎政人は「避難地確保に6か月」「1か月に1000万人の国外避難」の目標を掲げる。
計画的な移住を実現すべく、ショーンは全国民の国外避難地、時期、順番、個人情報などを一元的に管理する「ジャパンカード」の導入を義務化。同時に避難地と輸送手段を確保するため「(1)外交交渉(2)国土の買収(3)国連の支援」の3つに軸を置く。
「ジャパンカードなんて、今思えばマイナンバーカードを先取りしたアイデアですよね。当時はバブルがはじけて、商社は汚い会社って思われていた時期でもあったから、脚本では、商社に海外の土地や中古船舶を買収させたりした。政界では小池百合子が出てきた時代で、外務大臣に若手の女性政治家を起用する設定も入れました」(大森氏)