ダウンロードは厳禁
隆盛を極めるポルノハバー市場だが、このように一般人がアダルト動画を投稿することに法的な問題はないのだろうか。大阪グラディアトル法律事務所の森山珍弘弁護士が指摘する。
「Pornhubは海外のサーバーですが、“わいせつ”と認定される動画を国内で撮影して投稿したら罪に問われる可能性がある。判例によればわいせつの定義は、『いたずらに性欲を興奮、または刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの』とされており、性器にモザイクをかけていない動画はわいせつの要件を満たすと解釈されます。現状、モザイクが入っていれば、摘発の対象となる可能性は低いと言えます」
近年はアダルト動画の取り締まりが厳しくなり、Pornhubなどの動画サイトや、そのURLを紹介する「まとめサイト」にも当局の厳しい目が注がれるようになった。
「そもそも『わいせつ』の基準が幅のあるものなので、今後規制がさらに厳しくなることも十分考えられる」(森山弁護士)
わいせつに当たらないとしても、風営法上の問題が残る。
「性的な行為などの映像を見せる営業を行なう場合、『映像送信型性風俗特殊営業』を営む事業者として、自治体に届け出を出す必要があります。厳密な法律論で言えば、サーバーが海外にあっても、配信者が日本で活動するなら届け出が必要なのですが、ポルノハバーはこの届け出を出さずに活動しているケースが大半です。実際に風営法違反でポルノハバーが摘発された事例は聞きませんが、法的なグレーゾーンで活動している部分は否定できません」(同前)
では視聴者が罪に問われるケースはあるのか。
「アップロードされたアダルト動画を視聴するだけなら、視聴者が刑事罰に問われることは、現時点では基本的にないと考えてよい。
ただし、無修整などのわいせつ動画や無断転載動画など、日本で違法とされる動画をダウンロードして自身の端末に保存すると、刑事罰の対象になります。Pornhubは国内サイトのように適切に管理されておらず、日本でわいせつと判断される動画が出回る可能性がある。ポルノハバーの動画を自身の端末にダウンロードしたり、画面録画で保存するのは絶対に避けましょう」(同前)
前出の尾谷氏が語る。
「SNS上では『Pornhubで収益を増やすにはどうするか』が盛んに議論されており、この先もポルノハバーが増加するのは間違いない。
だからこそ、当局による摘発リスクはもちろん、男性が女性に無理強いさせる危険性、投稿者の意思に関わらず動画がネット上で無限に拡散される危険性は十分にある。動画内容もまだまだ男性主体のものが多く、女性側もどこか覚悟がないままアップしているような危うさを感じるケースもある。大金が動くビジネスだからこそ、女性が性的に搾取されないような仕組みを考えるべきです」
勃興するポルノハバーは、一攫千金と転落リスクの危ういバランスで成り立っている。
※週刊ポスト2022年1月1・7日号