新たな正月特番が生まれない理由
なぜテレビの華だった正月番組は、「事実上ゼロ」の状態になってしまったのでしょうか。
やはり理由に挙げられるのは、制作費と視聴率の問題。まず制作費は、「正月特番にふさわしいセット、キャスト、衣装、豪華プレゼントなどを手がける予算がない」「コロナ禍でますます厳しくなってしまった」という問題があります。一方、レギュラー番組の特番なら既存のセットなどをベースにできる上に、「固定ファンがいるため視聴率で大コケしない」というリスクヘッジが可能。
さらに、2010年代は新たな正月特番がことごとく失敗に終わったこと、正月特番用のスタッフを確保するのが難しくなったこと、「お金と人をかけるなら年内の視聴率を追い込むために年末特番のほうがいい」という意識があることなどもあり、業界内には「回避するのがベター」というムードが漂っているのです。
また、前述した『格付け』『スポーツ王』は、正月三が日だけの放送でしたが、高視聴率を記録したことで放送回数を増やし、「年に一度」「正月だけ」というプレミア感をテレビ局が自ら消してしまいました。
ただそれでも、「かなり惜しい」と思われる正月特番が2つ放送されています。1つ目は2003年から正月三が日の夕方に放送され続けている『さんタク』(フジテレビ系)。これは明石家さんまさんと木村拓哉さんの冠特番で、豪華な組み合わせは正月にふさわしい華やかさがあります。
2つ目は、『さんま玉緒のお年玉!あんたの夢をかなえたろか』(TBS系)。こちらは1995年のスタートから6年間は三が日の放送でしたが、ここ10年間は1月第2週という遅い時期に放送されているため、正月ムードが薄れてしまいました。
どちらも「正月の時期だけ見られる番組」として長年楽しんできた視聴者がいるだけに、正月特番の減った今こそ、あらためて存在価値をアピールするようなプロモーションをしてもいいのではないでしょうか。