特にがん検診は、手遅れになる前に受けるべきだ。東海大学名誉教授で健康診断の数値に詳しい大櫛陽一さんが言う。
「日本の健康診断には無駄なものが多いのは事実です。たとえばメタボ健診は、海外では最もくびれたウエストで腹囲を測定しますが、日本ではヘソの位置で測定するので値が高くなり約半数がメタボになってしまう。健康な人を対象に行う健康診断はデメリットの方が多いと海外ではいわれており、欧米では行われていません。
しかし、発見の遅れが命取りになるがん検診は受けるべき。欧米でのがん検診受診率は80%近いですが、日本は50%弱と少ない。“健診”も無症状で進行する糖尿病、肝障害、貧血などの早期発見に役立ちますが、“検診”は必ず受けましょう」
コロナ禍以前は、がん検診のリスクを指摘する意見も多かった。しかし、長いコロナ禍が国民の意識を変えるきっかけになったのではないかと医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが言う。
「以前は、PETや腫瘍マーカーの検査など、必要とは思えないオプション検診を提示され、漫然と受けている人が多かった。しかし、新型コロナを通して医療に関心を持つ人が増え、『症状があるからこの検診を受けよう』などと、自分にとって必要な検査の“見極め”が進んでいると感じます」
変異する新型コロナウイルスによって常識がいつ変化するかわからない。健康診断が正常値だったからと安心するのはまだ早そうだ。
※女性セブン2022年1月6・13日号