朝倉未来はMMAというリスクの高い筋書きのない物語を紡ぎながら、仲間とともに商圏を拡大しようとしている。闘う相手は対戦相手だけではなく、この社会だ。そして、次に彼が闘わなければならない相手は、数の論理になるだろう。つまり盛り上がればいい、盛り上がって儲かればいいという論理との戦いである。その萌芽を「格闘技を盛り上げる」ために朝倉未来がRIZINに推薦した選手による「八百長疑惑」に見ることができる。彼がこの“数の論理”にどのように対処するのか、興味津々であり、また不安でもある。
【プロフィール】
榎本憲男(えのもと・のりお)/1959年和歌山県生まれ。映画会社に勤務後、2010年退社。2011年『見えないほどの遠くの空を』で小説家デビュー。2015年『エアー2・0』を発表し、注目を集める。2018年異色の警察小説『巡査長 真行寺弘道』を刊行。シリーズ化されて、「ブルーロータス」「ワルキューレ」「エージェント」「インフォデミック」と続く。『DASPA 吉良大介』シリーズも注目を集めている。近刊に『相棒はJK』、1月20日に真行寺シリーズのスピンオフ作品『マネーの魔術師 ハッカー黒木の告白』が発売予定。