コラム

リノベーション・オブ・ザ・イヤー2021受賞作に見る、最新トレンド18選

(写真提供/株式会社タムタムデザイン)

1年を代表するリノベーション作品を決める「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」。その授賞式が2021年12月7日に開催されました。応募作品228から選出された総合グランプリをはじめ、各受賞作から最新のリノベーションの特徴を読み解きました。

【注目point1】自然災害、コロナ禍……リノベーションが地域復興の力に

ここ数年、毎年のように発生する大規模な自然災害に加え、一昨年から続くコロナ禍によって、大きな苦境に陥っている地域の文化や経済。物理的に破壊された地域や施設、観光経済に打撃を受けた地域。日本各地に暮らす人々にも多くの暗い影を落としています。

今年のグランプリ作品は、そうした地域に落ちた暗い影を吹き飛ばすような大型案件。2020年、球磨川の氾濫により甚大な被害を受けた「球磨川くだり」の観光拠点となる施設を復興したものでした。被災前、人吉城を踏襲した和風建築だった建物を、川向きに大きく開口した新旧融合の意匠により再生。本瓦の大屋根にガラス張りの開口部を組み合わせ、復興のシンボルとなる美しい佇まいを見せています。

災害復興だけでもかなりの費用やマンパワーなどが必要ですが、観光施設という、コロナ禍においては切り捨てられられがちな要因をものともせず、1年という比較的短い期間で再生を果たした点で、選考委員から「もっとも強烈にコロナの逆風が吹いた分野でのリノベーション」「関係者の決意に胸が熱くなる」「未来期待の創造もなしえた」と高い評価を受けました。

いまだ続くコロナ禍という大きな逆境を乗り越え、地域のシンボルとなる美しい自然と融合した憩いの場をつくり、地域に希望の光がもたらされる。リノベーションが生み出す大きな可能性を感じとることができました。

●総合グランプリ
『災害を災凱へ(タムタムデザイン+ASTER)』株式会社タムタムデザイン

【注目point2】ワークスペースとプライベート空間の切り離しに特徴

暮らしが劇的に変わったこの2年。テレワーク、おうち時間の充実などは今や普通のこととなってきています。今回のエントリー作品はコロナ禍においてプランされたものがほとんど。そのため、2020年同様、今回も「ワークスペースの設置」という職住融合を形にした作品が数多く見受けられました。

そんな傾向において、今回受賞した「商店街の昔ながらの家」「都市型戸建を再構成する。」の2作品は、ワークスペースとプライベート空間とを切り離すことを重視した点で注目が集まりました。一気に普及したオンライン会議によって、ワークスペースの独立性を確保する必要に迫られた結果だと思われます。

2作品とも、ワークスペースを玄関の土間スペースと合体するという特徴があり、いずれも店舗の奥に居住スペースがある店舗併用住宅や農作業スペースのある農家などをイメージした、職住融合家屋である点が共通しています。「職住一体の暮らしを商店街のお店になぞらえて、新しいオンとオフのつくり方を提示している」と選考委員から評価されました。

●500万円未満部門・最優秀賞
『商店街の昔ながらの家』株式会社ニューユニークス

●1000万円以上部門・最優秀賞
『都市型戸建を再構成する。』株式会社アートアンドクラフト

【注目point3】家族の成長に合わせた2回目リノベ

リノベーションは、家族の成長や人数の変化、ライフスタイルなどに応じて、住まいをより快適に変えていくという役割があります。だから1回では終わらず、中には2回、3回……と行う人も。今回は子どもの成長に合わせて、住み替えではなく、2回目のリノベーションを選んだという作品が受賞しています。

「リノベはつづくよどこまでも」「ハウスインハウスでタイニーハウス」の2作品は、家族4人で約68平米、家族3人で55平米といずれもコンパクトですが、間取り変更によって小さいながらも子どものスペースを生み出しています。ロフトや家内小屋空間など、ユニークな方法で空間を区切っているのが大きな特徴で、さまざまなリノベ手法の可能性があることが見て取れます。

作品名「リノベはつづくよどこまでも」が表すように、今後、必要に応じて全体的に、また部分的にリノベを重ねて長く住み続けることへの可能性を感じさせました。

●1000万円未満部門・最優秀賞
『リノベはつづくよどこまでも』株式会社ブルースタジオ

●ラブリーデザイン賞
『ハウスインハウスでタイニーハウス』株式会社ブルースタジオ

社会的課題を解決する作品や個性派リノベなどにも注目集まる

リノベーションが持つ社会的役割は大きく、社会のさまざまな課題を解決する手法としてその有効性を最大限発揮しています。いくつか事例を見ていきましょう。

1. 地域の活動拠点を担う施設へのコンバージョン
使われなくなった建物を、地域の人々が集う別の目的の施設へ変えていくことは、各自治体や各地方で進められています。受賞作の「BOIL_通信発信基地局から、地域参加型の文化発信基地局へ」は、神奈川県川崎市の「若い世代が集う賑わうまちづくり」の一環として、NTT基地局を文化施設にコンバージョン。「Blank~ワークライフバランスからワークライフシナジーへ~」は東北での活動拠点を担う施設となるべく、マンションをコンバージョンした複合施設です。

●無差別級部門・最優秀賞
「BOIL_通信発信基地局から、地域参加型の文化発信基地局へ」リノベる株式会社

●無差別級部門・最優秀賞
「Blank~ワークライフバランスからワークライフシナジーへ~」株式会社エコラ

2. 可変性の高い仕掛けで、産業廃棄物を最小限に
間取り変更を伴うリノベーションは、産業廃棄物増加の問題も生じさせます。受賞作「doredo(ドレド)−気軽に居場所を作り、作り直せる暮らし方−」は、木製の「箱」を組み合わせることで、部屋数や収納量などを変更できるフレキシブルさが特徴。暮らしに合わせて自分で間取りを変更することができるため、工事で生じる廃棄物問題を解決する有効な手法になる可能性を提示しています。一般的な「nLDK」という間取りの概念を壊すこのプランは、今後、より求められていくのではと感じました。

●R1フレキシブル空間賞
「doredo(ドレド)−気軽に居場所を作り、作り直せる暮らし方−」株式会社リビタ

3. 空き家問題を解決する住宅性能向上リノベ
全国にある空き家は約849万9000戸(「平成30年 住宅・土地統計調査」より)と、過去最多を記録。衛生環境や景観、治安などの悪化につながると危惧されている空き家問題を解決する方法として、リノベーションは有効です。高性能リノベーション、間取りや設備変更リノベーションで居住性能を格段に高めることで、新たな住み手を生み出しています。

●グリーンtoグリーン賞
「Green House」株式会社タムタムデザイン

●R5アフォータブル性能リノベーション賞
「国交省の長期優良住宅化リフォーム補助金のおかげで」株式会社まごころ本舗

●省エネリノベーション普及貢献賞
「省エネリノベーションをもっと身近に」株式会社インテリックス

また、理想のライフスタイルを目指した個性派リノベが今回も目立っていました。

●フリーダムリノベーション賞
「ビートルに乗ってリゾートへ? いえ、ここは団地の一室です。」株式会社フロッグハウス

●ニューノーマルリノベーション賞
「暮らし方シフト2020」株式会社リビタ

●絶景リノベーション賞
「穏やかな瀬戸内の海とともにある日常」よんてつ不動産株式会社

最後に注目したいのが、古き良き建物を生かしたリノベです。古民家は、古き良き情緒を感じさせてくれる地域の宝。とはいえ普段の使い勝手などを考えるとなかなか住み手が見つからない問題も。そんな古民家をリノベーションの力でより魅力的に快適に変えた作品を見ていきましょう。

●地域資源インテグレート賞
「アフターコロナを見据えた、地方建築家の新たな職能への挑戦」paak design株式会社

●フォトジェニック賞
「古民家が継なぐ、ふたりの夢」株式会社アトリエいろは一級建築士事務所

●ビジネスモデルデザイン賞
「目黒本町の家」株式会社ルーヴィス

●地域貢献リノベーション賞
「中山道脇のロングライフシンボル、町並みを応援する家」株式会社WOODYYLIFE

リノベーションが困難を乗り越え希望を見出す力となる

コロナ禍に揺れ、それを抜きには語れない年が2年続きました。テレワーク、オンライン会議が当たり前のように行われる状況では、家の中に専用スペースをつくらざるをえない人も増え、そうした「ワークスペースの拡充リノベ」が、リノベーション業界の大きなテーマとなっているのが今回の受賞作品から見てとれました。

ライフスタイルを見直すことが余儀なくされ、生活拠点をも見直すような事例も多かったでしょう。いずれの見直しにおいても、暮らしの質を高める手法としてリノベーションが有効であることを、各作品は教えてくれています。

2020年に洪水による大きな被害とコロナウイルス感染対策の影響をもろにかぶった観光施設の復興がたった1年(関係者にとっては長い1年だったでしょうが)で成し遂げられ、地域の希望となったことに、地元・熊本をはじめ、選考委員会や、投票(反響数830いいね!)した方々も驚いたのではないでしょうか。

希望や心の拠り所が求められる時代、リノベーションは、人が楽しく集える場所を生み出し、仕事も暮らしも快適に過ごせる住まいを数多くつくっています。授賞式を終えて、以前にも増してリノベーションが時代にも人々にも求められていることを感じました。

次回も、人々が希求する素敵なリノベーション作品に出合える日を心から楽しみにしています。

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●取材協力
リノベーション協議会「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2021」

(金井直子)

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