『プロフェッショナル』は放送縮小へ
そしてもう1つあげておきたいのは、人物密着ドキュメンタリーというジャンルの“金属疲労”。『情熱大陸』が23年超にわたって放送されているだけではなく、似たコンセプトの『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)も16年にわたって放送され続けてきました。しかもその『プロフェッショナル 仕事の流儀』は今春でレギュラー放送を終了し、月1回程度の特番になると報じられています。
スポニチの報道によると、同局関係者は「長年続く中で、取り上げる職業のジャンルも狭まり、徐々にインパクトが薄れたのは否めないが、ここまで続いたこと自体が偉業」「普段取り上げられることの少ない業界や職人にスポットライトを当てたのは大きな功績」とコメント。
これは「一定の役割を終えた」という意味合いが強い上に、「インパクトが薄れて視聴率が低迷している」というニュアンスを含んでいました。長年レギュラー番組としてハイペースで放送し、さまざまなジャンルの人をカバーし続けてきたことで、「人物密着ドキュメンタリーに対する興味関心がかつてほどではなくなっている」という判断なのでしょう。
しかし、芸能人やアスリートなどのメジャー路線を続けると、どこかプロモーションビデオのように見えてしまうのが人物ドキュメンタリーの難しいところ。また、長年『情熱大陸』を見続けてきた熱心なファンも納得しないでしょう。1月下旬以降はメジャー路線をやめて、再びバランスの取れた人選に戻る可能性もありそうです。
かつてこの番組を取材したとき、「どんな人選で、どんな演出になっても、葉加瀬太郎さんのオープニング『情熱大陸』とエンディング『Etupirka』と、窪田等さんのナレーションは変えない」という制作サイドの矜持を聞きました。深夜帯ながら強力な裏番組がそろう中、ブレない姿勢を貫き通すことがピンチを乗り越え、長寿番組の強みを発揮することにつながっていくのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。