実は、IQが高いからといって、すべての教科で満点を取れるとは限らないという。
「ギフテッドは、突出した能力を持つ一方で、苦手なことはトコトン苦手。数学は得意でも国語がまったくできず、そのことを追及されるあまり登校拒否になってしまった子もいるほどです」(東京ウエストインターナショナルスクール学校長の川崎由起子さん)
中学生になった竹中さんは、しばしば父と対立するようになる。人並み外れた記憶力と理解力を持つ竹中さんが理路整然と反論すると、むきになった父は決まって「お前は自己中でダメなやつだ」と人格を否定するような言葉を投げかけた。その頃から、周囲の友人とも話が合わなくなり、学校でも孤立するようになったという。
竹中さんの父は、わが子のため、必死になっていたのだろう。しかし、否定され続けた竹中さんは「自分はほかの人より劣っている、自己中でダメな人間なんだ」と、深く傷ついた。
ギフテッドの子供はしばしば、対人関係に問題を抱えることがある。しかし彼らが皆コミュニケーションが苦手というわけではない。ましてや発達障害や自閉症と同一視するのはタブーだ。北海道教育大学旭川校教授で『ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法』(小学館)著者の片桐正敏さんが言う。
「確かに、発達障害を併存しているギフテッドもいます。しかし、すべてのギフテッドに発達障害があるわけではなく、他者のために役立つ向社会的行動が取れるギフテッドもいます。にもかかわらず、日本では、集団行動を乱したり、授業中に集中力を欠いたりする、学校で手のかかる子が、発達障害とひとくくりにされやすいのが問題です。個々の特性を見極めて、その子の強みを引き出すかかわりをすべきです」
ギフテッドの中には、自閉症やADHD(注意欠陥・多動性障害)、学習障害を併せ持っている子もいるが、それはほんのわずか。発達障害などに対する支援は、ギフテッドへの支援とは性質が異なるうえ、発達障害が誤診だった場合、進路や就職にも影響が出る。
「日本では、ギフテッドの子が学校で“落ち着きがない”などと言われると、保護者も“うちの子はADHDかもしれない”などと決めつける。“うちの子に落ち着きがないから、なんなんですか。テストはいつも満点ですよね?”と、言い返すくらいでいいのです。保護者だけは、どんなときでも味方でいてほしい」(川崎さん)