花粉症の人には朗報に聞こえるが、小西氏は「今回の研究結果は明確ですが、メカニズムの解明にはより多くの調査が必要です」と語る。
花粉症とがんの関係について、東京大学医学部附属病院放射線科特任教授の中川恵一医師が解説する。
「この結果には人間の持つ『免疫監視機能』が関係していると思われます。花粉症の人は免疫反応が過剰なため、反応として様々な症状が現われるのですが、がんの予防でも同様に免疫力が重要です。人によって差はありますが、60歳以上になると1日数万個のがん細胞が体内で作られています。それを殺すのが、免疫監視機能なのです」
つまり、花粉症の人の強い免疫力が、がん細胞と戦うのに役立つ可能性があるというのである。前出の小西氏もこう言う。
「花粉症やアトピーなどアレルギー性疾患は、ウイルスなどに対する免疫機能を持つ『T細胞』や、『B細胞』の暴走によって生じます。
すなわち花粉症を持つ人は、T細胞やB細胞がより敏感で、がん細胞を見つけて攻撃しやすくなっていることでがんの死亡リスクが低くなっている可能性が考えられます」
治さないほうがいい?
高齢者は加齢とともに免疫力が低下するため、がん細胞が育ちやすい。
「ということは、高齢かつ花粉症の人は免疫力を維持しているため、がんの死亡リスクが低い可能性があるのです」(同前)
免疫監視機能は強すぎても弱すぎても不都合が生じるところが難しい。前出の中川医師が言う。
「花粉症治療薬などを服用するとアレルギーは抑えられるが、免疫力全体の働きが弱まり、がんと戦う力が減じる可能性がないとは言えません」