(写真/時事通信社)

2016年には安倍首相が「8項目の協力プラン」などを提示した(写真/時事通信社)

経済協力だけが引き出されている

「引き分け」発言で期待感が高まり、日本側は様々なかたちでプーチン大統領との距離を縮めようとしてきた。とりわけ、2012年12月に発足した安倍政権下では、安倍晋三首相の訪露や、ソチ五輪の開会式出席など関係改善に重きが置かれ、2014年の一方的なクリミア併合後も、首脳同士の距離感を詰めようという試みが繰り返されてきた。2016年には安倍首相が「8項目の協力プラン」などを提示し、日本の経済力をもってプーチン氏から譲歩を引き出そうとしてきた。

「だが、2016年12月に来日したプーチン氏は読売新聞と日本テレビのインタビューで『ロシアに領土問題は存在しない』と言い放つなど、その時々で姿勢を少しずつ変えて日本側を翻弄しました。この時の訪日に際して、プーチン氏を空港で出迎えたのは当時の外相だった現在の岸田文雄・首相ですが、訪日によって北方領土問題が進展することはとくになかった。結局、経済協力だけがいいように引き出されるばかりで、プーチン氏は北方領土交渉を進めるつもりなんて、はなからなかったのではないか。これじゃ『引き分け』じゃなくて『勝ち逃げ』でしょう」(前出・自民党関係者)

 プーチン大統領の交渉術にしてやられてきた感のある日本政府。ただ、ウクライナ侵攻については国際社会からの制裁による包囲網も狭まり、ロシア国内での反戦デモの動きもある。プーチン大統領にとって、今回ばかりは「引き分け」での決着とはいかない。

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