2005年に初出馬した衆院選で記者会見する稲田氏(時事通信フォト)

2005年に初出馬した衆院選で記者会見する稲田氏(時事通信フォト)

──どんだけ! 自民党の何がいいんですか?

「立党の旗がしっかりしていますからね。安倍さんがおっしゃる『戦後レジームからの脱却』、憲法改正によって本当の意味で日本が独立を果たすという目標ですよね」

 稲田氏にはもうひとつの挫折体験がある。一部マスコミの批判的な報道に対し、名誉毀損訴訟を起こして応戦した時期があった。一件は敗訴、もう一件は取り下げて終結した。当時を振り返り、過剰防衛だったと自省する。

「今考えると、マスコミと溝をつくらずに、もう少しうまく対応できたのでないかと」

 保守主義とは「人間は不完全である」という前提に立つ謙虚な思想である。間違える存在であるがゆえに、先人の知恵や伝統にならい、自らを律し、過ちを改めながら前進していく。本来、排外主義や権威主義、あるいは「ヘイトスピーチ」とは一線を画す鷹揚な概念なのである。

 稲田氏は雌伏の間、保守思想を一から学び直した。そして今、多様性を認め合える寛容な社会をつくることが「日本の良きもの」を保守することにもつながると主張する。

──リーダーは常に毀誉褒貶に晒される。自分を見失わないために続けていることって、何かありますか?

「1日おきで、ランニングをしていますね。今朝も10キロ走りました。秘書も伴走してくれたんですけど、途中でいなくなっちゃったな(笑)」

──10キロは伴走する方も大変ですね。道端で「あ、稲田朋美だ!」と気付かれることはないんですか。

「ないない。化粧してないし、帽子かぶってサングラスして、ランニングの格好をしているでしょ。地元の福井では気付いてほしいじゃないですか。でも気付かれない」

──安倍さんのストレス解消法はゴルフ、菅さんは朝の散歩、岸田さんは風呂場での独り言……。稲田さんはランニング。

「私だって、凹むんですよね。朝走ると絶対頑張ろうって感じに切り替わります。とにかく朝日を浴びたら、なんかすべて望みが叶うようなポジティブな気分になる(笑)。やったほうがいいですよ、みなさんも!」

(了。第1回から読む

【プロフィール】
稲田朋美(いなだ・ともみ)/1959年、福井県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1982年、司法試験合格、1985年、弁護士登録。李秀英名誉毀損訴訟、「百人斬り」報道名誉毀損訴訟などに携わる。2005年に初当選後、内閣府特命担当大臣(規制改革)、国家公務員制度担当大臣、防衛大臣、自民党政調会長、同幹事長代行などを歴任。衆院福井1区選出、当選6回。

【インタビュアー・構成】
常井健一(とこい・けんいち)/1979年茨城県生まれ。朝日新聞出版などを経て、フリーに。数々の独占告白を手掛け、粘り強い政界取材に定評がある。『地方選』(角川書店)、『無敗の男』(文藝春秋)など著書多数。政治家の妻や女性議員たちの“生きづらさ”に迫った最新刊『おもちゃ 河井案里との対話』(同前)が好評発売中。

※週刊ポスト2022年4月1日号

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