国際情報

ロシアの情報統制が招くプーチン支持者と反プーチン派の分断

ウクライナは戦火に包まれている(時事通信フォト)

ウクライナは戦火に包まれている(時事通信フォト)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、徹底的な情報統制を行うロシアの「プロバガンダ」について。

 * * *
 プロパガンダが一国としてどのように行われ、展開されていくのか、こんなにはっきり目にすることもないだろう。フリルのついた水色の服に、同じ色のリボンを三つ編みのおさげ髪に編み込んでいた、12才のソフィア・コメンコさんが出演していた動画を見て、そう思った。

 彼女が出演していたのは、ロシア教育省が3月3日、オンラインで公開した教育動画。司会者と歴史専門家はロシアのウクライナ侵攻について、「ウクライナ危機が始まったのは最近のことではない」、「ロシア派はこの問題を平穏に納めようと努力し、ミンスク合意などを欧州の国々に働きかけた。しかし、合意で戦争は阻止できなかった」と、戦争が起きたのはヨーロッパ側がロシアの停戦の求めに応じなかったからと説明。「私たちはウクライナを平和にしたい。軍事的発展を阻止しロシアに対する脅威をなくしたい」と正当性を強調し、分かりやすい言葉で彼女に説明していた。

 さらに司会者はソフィアさんに、SNSのフェイクニュースについても話した。ミサイルが幼稚園に当たったこと、戦車が破壊されたことなど、「その情報をSNSに投稿する前に信憑性を確かめるべきだ。あなたが見ているものを分析して、批判的に物事を見てください」と諭した。投稿される情報はフェイクだから信じるな!と頭ごなしに命じるのではなく、自分で分析して物事を見るように教えるとは、さすが子供向け教育動画だけのことはある。

 今の子供たちはネット世代だ。情報統制したとしても、ネットを通じて多くの情報にアクセスできるため、ロシアがフェイクだと主張する情報ばかりを知らないうちに集めてしまう可能性もある。「フィルターバブル現象」だ。インターネット活動家のイーライ・パリサー氏によって名付けられたこの現象は、検索エンジンやSNSなど、インターネット上での利用履歴によって、自分の見たい情報しか見えなくなるという。

 まだ主義主張などが固まっていないだろう少年少女たちには、「SNSを使うな、動画を見るな、情報を信じるな」と禁止するより、どんな情報にも懐疑心を持って見るように教え、自分の目で間違い探しをさせたほうが効果的で反感も反抗心も持たれない。一方的に教え込むよりも、自分自身でプーチン大統領や政権の正当性を確かめさせる方が、プロパガンダとしては成功しやすいように感じる。

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン