近年、健康にいいダイエット法として話題になっている低炭水化物食も、がんリスクを上げることが報告されている。
「国立がん研究センターの調査では、特に直腸がんリスクとの関連性が指摘されています。炭水化物を減らす代わりに、大腸がんリスクを上げるとされる赤身肉や加工肉を多く摂ってしまう人が多いことがその理由だと考えられます」(秋津さん)
“百薬の長”といわれ、適量であれば長寿につながるとされてきたアルコールも、最新の知見によってがん予防の面では有害であることが明らかになってきた。特に女性は、週に1回以下であっても飲酒習慣のある人はそうでない人に比べ、乳がん発症リスクが1.46倍高まるという。
「少量ならば動脈硬化予防などに効果があるとの報告がありますが、がんに対してはほんの少しでもリスクを上昇させてしまう。アルコールを代謝するために肝臓に負担をかけてしまうほか、腸内環境が乱れて免疫力が下がることも理由として考えられます。お酒とのつきあいは、持病や家族の既往症などを考えたうえで慎重にした方がいい」(秋津さん)
アルコールと同様、「諸刃の剣」なのが緑茶だ。肺がんや卵巣がんなどのリスクを下げるとする研究結果がある一方で、熱いお茶と食道がんの関連性を示唆するデータもある。
「緑茶に含まれるカテキンには、がんの原因物質となる活性酸素を除去したり、動脈硬化を予防する効果があり、がん対策に加え、脳梗塞や心筋梗塞の罹患リスクも下げてくれる働きがあります。しかし一方で熱いお茶はのどを強く刺激し、食道がんリスクを上げる。温度には注意を払うべきでしょう」(秋津さん)
病気を治すためにのんでいるはずの薬の中にも、がんリスクを高めるものがある。細菌感染症の治療に欠かせない抗生物質は、スウェーデンが約24万人の男女を対象に行った大規模調査によって、6か月以上にわたって服用し続けた人は、服用しなかった人に比べて結腸がんリスクが17%高くなることが報告された。
「抗生物質は感染症に対して強い効果を持つ半面、その強さゆえに腸内の善玉菌までも除去してしまうデメリットがある。そのため長期にわたってのみ続けると腸内細菌による免疫が失われ、発がん物質が体に入りやすくなる可能性があります」(秋津さん)