【図表2】2021年は出生数「75万人ショック」に見舞われた
人口=国力の低下ほど深刻な問題はない
さらに、日本の場合には、もう1つ大きな問題が出てきます。
国立社会保障・人口問題研究所は、日本の出生数についての将来推計を発表しています(図表2参照)。ところが2019年、つまり、新型コロナウイルス禍に襲われる前の時点で、「86万人ショック」というのがありました。人口問題研究所の推計に比べて予想以上に早く86万人になってしまったのです。さらに、2020年は84万人、2021年(推計)は75万人と、新型コロナの影響もあって、出生数が激減しました。もともと人口問題研究所の推計では、出生数が75万人になるのは2039年頃と考えられていました。したがって、18年も前倒しで出生数が減ってしまったことになります。
少子化の問題は、この2年で一気に加速したわけです。政治家にとって、これ以上深刻な問題はありません。人口というのは、国力です。人口が減っているということは、GDPも上がらないし、人々の胃袋は増えないし、そもそも警察や消防、自衛隊など、国や地方の社会基盤を支える人材がいなくなるということです。
しかも、介護や看護といった仕事をするのも比較的若い人ですから、この将来の人口が減るという問題以上に重要な問題はないはずですけれども、これに真剣に向き合って有効な解決策を提案している政治家はいません。
政治家が関心を持っているのは、いま目の前の政治アジェンダだけで、そんなことをやっているとあっという間に選挙が来てしまいますから、オリンピックをどうするかとか、新型コロナ対策はどうするかといった話に終始して、本来なら5年10年かけていろいろ準備して進めなければいけない問題に取り組もうというような政治家はいません。今の政治家たちの政策の時間軸というのは、おそらく数か月程度ではないかと思います。
しかし、私が近著『経済参謀 日本人の給料を上げる最後の処方箋』で詳述したように、この問題の根本的な解決なしには日本の“老衰”はいつまで経っても止まりません。