(写真/時事通信フォト)

2019年11月、スキー開幕イベントでスキージャンプ小林陵侑選手らの前で『恋人はサンタクロース』を熱唱した(写真/時事通信フォト)

ニューミュージック誕生 そして、第1次ブームに

「既成の音楽のイメージを次々と打ち破っていく彼女に、新感覚という言葉はピッタリでした。プロデューサーの村井さんも気に入ってくださり、再デビューが決定。それが1973年にリリースされたファーストアルバム『ひこうき雲』です」

 アルバムのタイトルにもなったこの曲は、筋ジストロフィーを患っていたユーミンの小学校の同級生をモデルに作られたという名曲。彼は高校1年生で亡くなり、ユーミンは葬儀に参列したときの心情を歌詞にしたという。発売から40年経った2013年、この曲はスタジオジブリのアニメ映画『風立ちぬ』に起用され、トータルセールスは25.9万枚を記録。いまも世代を超えて愛され続けている。

 1970年代半ばに入ると、“新感覚派ミュージック”と呼ばれたユーミンの音楽は、ニューミュージックと名前を変え、新たな音楽シーンを築く。

 ユーミンは、後にエッセイ『ルージュの伝言』(1983年/角川書店)の中で当時のことを綴っている。

《ニューミュージックって言葉は嫌いなんだけど、まあ、こういう音楽は私がはじめたわけでしょう。私、ゼロからはじめたんだもの。だから、過去のものとは較べようがない。

 関係ない話かもしれないけれど、四畳半フォークって言葉、私が考え出したんだよ。有閑階級サウンド、中産階級サウンドっていうのも私が命名したの。それを富澤一誠とかが使い出して、そのうち浸透したわけ。》

「この四畳半フォークとバッサリ言い放つところも、独特なものの見方だなと思って感心しました。そもそも彼女は“音楽は趣味、音楽でお金を稼ごうなんて考えてない”と話していましたから、いつも自然体で、肩の力が抜けた感じ。自分の心情を歌にするのではなく、朝起きて気楽に聴ける“イージーリスニング”が自分の音楽だと話していました」

『ひこうき雲』はリリース直後から注目を集めるようになる。そのきっかけを作ったのはラジオだった。

 映画や舞台など多くの作品でユーミンとタッグを組んできた、ホイチョイ・プロダクションズの馬場康夫さんは、ラジオでユーミンと出会った人が多いという。

「ぼくはユーミンより1才年下で、当時は成蹊大学の学生でした。ユーミンのことは、その頃、TBSアナウンサーで、名物ラジオDJだった林美雄さん(享年58)が、自分の番組でガンガン紹介していました。

 1970年代初頭までは、まだ日本でも学生運動の名残があったけど、ユーミンがデビューした頃から、社会は明るい方向へと向かい出した。1975年にはベトナム戦争も終わり、学生たちが反政府の立て看板からテニスラケットやサーフボード、スキー板に持ち替えたのもその頃。そんな時代の流れにユーミンの曲はぴったりとハマったんです」

 1974年に発売した2枚目のアルバム『MISSLIM(ミスリム)』は26.8万枚、3枚目のアルバム『COBALT HOUR(コバルト・アワー)』(1975年)は43.5万枚の大ヒットを記録。こうして第1次ユーミンブームが訪れる。

(第2回につづく)

取材・文/廉屋友美乃 

※女性セブン2022年5月12・19日号

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