ライフ

肉類に生息する「カンピロバクター」 対策には“手抜き料理”を

「カンピロバクター」により集団食中毒が発生した事例も

「カンピロバクター」により集団食中毒が発生した事例も

 今もその対応に悩まされている新型コロナウイルスだけでなく、人類は様々な感染症とともに生きていかなければならない。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、肉類に生息する「カンピロバクター」についてお届けする。

 * * *
 2016年、食のイベントでの「ささみ寿司」の提供で、カンピロバクターの集団食中毒が発生した事例がありました。

「新鮮だからこそできる鶏ささみ寿司」とアピールし、500人を超える患者が発生したそうです(厚労省)。当時、このニュースは私にとっては衝撃的でした。鶏肉は中心部がピンクから白くなるまでよく加熱するのは常識だと思っていたからです。

 カンピロバクターは、螺旋状の桿菌でコルクスクリュー様の運動をします。鶏、牛、豚、羊などの動物の消化管に常在菌として生息し、糞便からも検出されることがあります。特に鶏肉は十分な加熱をせずに食べたり、調理した人の手や調理器具などで、菌が口に入ったりして感染することがあります。これは大量の鶏を処理する食肉加工の作業の中で、消化管内の菌が精肉に付着することがあるからだと考えられています。

 潜伏期は通常2~5日で、下痢(水溶性、血便、粘血便)、腹痛、嘔吐、頭痛などの症状が出ます。下痢は1日に数回ですが、重症な例では大量の水様性の下痢によって、急速に脱水症状に至る場合があります。ほとんどは予後良好ですが、下痢、嘔吐、腹痛、血便などがひどいときは、自己判断で下痢止めなどを飲まずに医療機関を速やかに受診してください。重症例には対症療法とマクロライド系の抗菌剤などによる治療が行なわれます。下痢止め薬は排菌を遅延させる可能性があるので使用しません。

 また、感染から1~3週間後にギラン・バレー症候群(複数の末梢神経に障害が起こる病気)を発症した例も報告されています。症状がおさまっても、便中に2~3週間は菌が排泄されますので、日常的にトイレの後の手洗い励行が大切ですね。

 鶏肉はもちろん、基本的に肉類はよく加熱することです。そして、調理の順番が大切です。サラダ等非加熱の料理を先にし、ラップをして冷蔵庫に保管。その後に、鶏肉やひき肉などの肉料理に取り掛かります。手や調理器具を介した感染を防止するためです。まな板、包丁などの調理器具は肉類専用、野菜類専用に分けるか、使用後はすぐに洗って、熱湯で消毒をします。生肉を触ったら、他のものを触る前に手は液体せっけんで2度洗いをしましょう。冷蔵庫で保存するときにはビニール袋を二重にするなど、液漏れにも注意します。

関連キーワード

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン