テレビの中の上島さんしか知らないこちらは、その表の顔と普段の彼のキャラや個性を重ね合わせて見ていたのだろう。彼のイメージとかけ離れた今回の訃報に驚いた。楽しく笑わせてくれた芸がもう見れないのが残念でならない。
「人間は『ペルソナ』を付けている」と心理学者のユングは述べている。ペルソナは古典劇において役者が付けた仮面のこと。ペルソナは、人が他人に向けて見せる外向きの顔で、人が外の世界に対して付けている仮面だという。そしてペルソナは1つではない。「人間には千個のペルソナがある」とユングは言った。ペルソナを通じて、人は本当の性格ではない違う性格を演じ、「他人にこう見られて欲しい」という自分の姿を見せる。
人はいくつものペルソナをつけ替えながら、さまざまな状況に適応し役割を担い、他人との関係を良好に築いていくものだ。ペルソナを付けていないと人は無防備になるが、自分で作り出したペルソナのイメージが強く大きくなりすぎてストレスになることもあるという。また、ペルソナは本当の顔を隠してしまう。自分が本当は何者であるか、外には示さないというのだ。
昔、某俳優が突然亡くなった時、ある精神科医がこう言った。「彼は俳優としてのペルソナを付け、見事にその役を演じきったんだろうな。だから突然の訃報を聞き誰もが『なぜ』、『どうして 』と思ってしまうのだろう」
ペルソナは“仮面”ではあるが、その人を形作る要素の一つ。そのペルソナを剥がして、メディアがあれこれ詮索する必要も、心ない憶測もいらない。ご冥福をお祈り致します。