コラム

白馬の山・湖・空・雪原、大自然で「エクストリームワーケーション」! 今までの“労働観”が変わった

(写真撮影/嶋崎征弘)

ワークとバケーションを組み合わせた「ワーケーション」、多くの人が興味を寄せていて、旅行サイトやホテルなどの宿泊施設でもさまざまなプランを目にするように。そんななか、あえて大自然など仕事をするには厳しい環境下でワーケーションをする「エクストリームワーケーション」を実践している人がいます。その“極限の仕事ぶり”を現地からお伝えします。

パソコンさえあれば、極限状態でも仕事はできる!

エクストリームワーケーションを実践しているのは、株式会社ニットで会社員をしている西出裕貴さん。定額全国住み放題のサービス「ADDress」を利用し、その利用者仲間で「エクストリームワーケーション部」を結成、現在、部長を務めています。仕事はフルリモートということもあり、全国の複数の拠点で暮らしていますが、今回はエクストリームワーケーションの場所として長野県白馬村の河川敷で仕事をするというので、さっそくお邪魔してきました。

ワーケーションといっても、滞在先のホテルに缶詰になり、子どもたちや家族が遊んでいて、大人は都会と同様にPC前で作業に追われる――なんていう様子をイメージする人も多いはず。もともと、エクストリームとは「極限の」「過激な」という意味で、「エクストリームワーケーション」は直訳すれば、「過激な・極端なワーケーション」になります。単にワーケーションをするのではなく、ありえない限界の環境で働くということでしょうか。ちょっと過去の写真を拝見するだけでも、これで仕事になるの……? と疑問はつきません。

取材日、山の稜線は美しく、川のせせらぎは耳に心地よい、最高な環境でした。いくらPCとネット環境が整えば働けるとはいえ、これで働けるのでしょうか。西出さんとともにエクストリームワーケーション活動をする仲間のヒョンさんにも話を聞いてみました。

「大自然のなかにいると、それだけで幸福度が上がるという研究もあるほどですし、景色や環境からインスピレーションを得られることも。例えば、一般財団法人たらぎまちづくり推進機構(熊本県多良木町)と『ADDress』が連携して3日間にわたってさまざまな講座を行う『たらぎつながるDAYS』という関係人口創出プロジェクトを行ったときに僕も講師を務めたのですが、そのなかで『楽しく働けるワーケーションマップを作ろう』というコンテンツのアイデアにつながりました。こんな環境下だからこそ、仕事の考え事やアイデア出しが捗るし、展開や構想を練ることができると思っています」(西出さん)

ヒョンさんも、「自然の環境のなかだと、考えごとや何気ない会話がよい仕事、企画につながる気がしますね。ただ、メールの返信やオンライン会議などの、『作業』的なものは近くの屋内のワークスペースを利用しています」と続けます。

「『エクストリームワーケーション』と聞くと、“極限状態で働くワーケーション”という印象を持つ方が多くいますが、極限状態でなくても大丈夫です。エクストリームワーケーションとは、自分の好きな 、あるいは心地良いワークスタイルを探究していくこと。“極限”は人によって異なります。今までやっていないこと、あるいは普段の働き方を一段深めてみることも一種の“極限状態”です。なので普段の働き方と異なるワークスタイルをすることはもちろん、ガジェットや音楽、コーヒーなど働く中で自分の好きなもの・これなら楽しく働けそうと思うものを取り入れてみることも、立派なエクストリームワーケーションです。ぜひ、できるところから、楽しみながらワクワクするワークスタイルを探究してもらえたら嬉しいですね」(西出さん)

1回あたりのエクストリームワーケーションは1時間から2時間程度で終えて移動し、屋内のワークスペースに移動することが多いそう。ワクワクする、気持ちが晴れやかになる環境やアクティビティを選ぶことが多いといいます。そのため、アウトプットの質が大切になる「クリエイティブ」「思考型」の仕事がより向いていると解説します。

父の余命宣告で考えた、働くことと場所、移動の意味

今でこそアクティブにストレスなく仕事をしている西出さんですが、もともとは多くの人と同様に、仕事漬けの日々だったといいます。

「都内のシングル向け物件に暮らして、朝出社して深夜の日付が変わるころに帰宅、土日は眠って夕方にぼんやり家事して夜は遊びに行って……そんな生活を送っていまいた。転機になったのは、父の余命宣告です。大病を患い、あと1年と宣告されたんです。僕は関西出身なので、年に2回帰省していたんですが、単純に考えれば会えるのはあと2回。そのとき今のこの働き方でいいのか、自分は幸せなのか、すごく考えて、考え抜いて、フルリモートワークの会社に転職したんです」(西出さん)

お父様の余命宣告をうけ、転職という大きな決断をした西出さん、さっそく大阪と東京の2拠点生活をはじめ、ワーケーションにもチャレンジしていたそう。そんなさなかの2020年、新型コロナウィルスの流行に伴い、移動が制限される状況になってしまいます。

「移動できなくなってしまって、狭い空間で仕事することが増えました。ここであらためて、働き方はもちろん、自分は行動を制限されることがつらいのだな、と痛感しました。家族であっても、いつも同じ空間にいなくてはいけないのはストレスも大きい。同時に仕事のパフォーマンスも落ちることを痛感しました」(西出さん)

転職のきっかけとなったお父様を無事に見送り、現在では全国の感染状況を鑑みつつ、さまざまな場所で多拠点生活を送っています。
「スーツケースとリュックに荷物を詰めて、移動して暮らしています。大阪の実家に帰るのは衣替えのときくらいですね(笑)」

一方のヒョンさんは、現在、夫と二人暮らし。コロナ禍をきっかけに完全在宅勤務となりましたが、家以外のくつろぎの場所を求めて、2021年から「ADDress」で多拠点生活をスタート。そして「エクストリームワーケーション」を体験するなかで、なんと会社を退職することを決断し、現在はフリーランスになりました。

「会社はフルリモートOKで、お給料の不安もなく、安定・安心なのはわかっていたんですが、ぜんぶ守られているでしょう。そこから一度、飛び出してみたくて(笑)」と決断した理由を話します。

なんでしょう、一度、「エクストリームな状態」で働いてしまうと、オフィスビルに通って仕事をするというスタイルに戻れなくなるのでしょうか。「どこでもできる!」というのが大きな自信につながり、変化を恐れない人になれる、そんな魅力があるようです。

パフォーマンスアップ、ストレス減、プライベート充実……といいことづくめ

エクストリームワーケーションを通して西出さんが実感したのは、「自分の好きな、あるいは心地良いワークスタイルを自ら主体的に選べることが働く上で最も豊かな気持ちになること」

「決められた時間に決められた場所に行って、時間になったら帰るのが当たり前になっていますが、でも、本来、人って心地よく働ける時間も場所も違うでしょう。朝型の人もいれば、超夜型の人もいる。別に都会の高層ビルで働かなくてもいい。好きな場所で好きなように働くことができれば、もっと多くの人が幸せになれると思うんです」と話します。

ほかにも、エクストリームワーケーションの良さとして、「ボーダレスなので、一緒にエクストリームワーケーションをするメンバーは社外の人でもOK。他の会社の方・職業が異なる方・あるいは実際にその地域に住む人としてもよいので、地域の人とのつながりができること」を挙げてくれました。

「今回のエクストリームワーケーションの極限ポイントは、“コーヒー”と“リモートワーカーと働くスタイルが正反対の白馬のコーヒー屋さんとコラボをすること”でした。『HAKUBA COFFEE STAND』学さんは、ADDressで白馬を訪れるようになったことで繋がった友人で、コーヒーに対するこだわりや新しいものをどんどん取り入れて追求し、継続していく姿にいつも尊敬の念が尽きません。この絶景の中、尊敬する学さんがセレクトしたコーヒーを飲んで仕事をしたら絶対楽しいだろうなぁと思ったし、学さんもYouTube配信でいろんな人とコラボしたいと話していたので、もしかしたらWin-Winの関係になるかもと思って、今回コラボ打診しました。そしたら『いいね!やろう!』と二つ返事でOKをもらえたので、嬉しかったですね」(西出さん)

ヒョンさんは、大きなストレスにもなる人間関係のあつれきが減ることも挙げます。

「この環境だとノーストレスなんです。出社している時のように会社の人に気を使ったりすることもなく、ストレスを感じそうな時も自然が緩和してくれます。また、複数の拠点で働くので、複数のコミュニティとつながっていられる。何か嫌なことがあっても、別のコミュニティの人と話してると、大した悩みじゃなかったなと、気にならなくなるんですよ」と朗らかです。

もちろん、現在の世の中で「エクストリームワーケーション」ができる業種・業態は限られています。ただ、テレワークをできる人が、「エクストリームワーケーション」や「ワーケーション」を導入することで、渋滞や混雑が緩和できたり、繁忙期の負荷が軽減され、結果としてすべての働く人の幸せ度があがるのかもしれないなと思えました。

かつてない感染症を経験した今、「定時出社」「満員電車に揺られる」「都会のビルで長時間労働」のようなかつてのノーマルには戻らないかもしれません。働く場所や暮らしはもっと自由でいい。なんなら、自分達で好きな心地良いワークスタイルをつくってもいい。だとしたら、西出さん、ヒョンさんのように、変化を楽しんだもの勝ち、なのかもしれません。

●取材協力
エクストリームワーケーション
西出 裕貴さん(note)
ヒョン さん
HAKUBA COFFEE STAND

(嘉屋 恭子)

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