オフィス街丸の内のランチタイム風景(イメージ、AFP=時事)

オフィス街丸の内のランチタイム風景(イメージ、AFP=時事)

「お昼はとにかく節約ですね。こんな年収なのに会社は都心のお洒落な立地なんですよ、だから外食がとても高い。なるべく残り物を詰めてお弁当にしますが、どうしてもというときは駅前まで出て牛丼の並とか立ち食いそばですね。最近高くなってるんで、もっと高くなったらどうしようと思ってますが」

 Bさんにとって命綱の牛丼やそばもまた値上がりし続けている。昨年から吉野家、松屋、すき家、なか卯の牛丼チェーン4社や富士そば、小諸そば、箱根そば、ゆで太郎の立ち食いそばチェーン店4社は原材料費の高騰から値上げを続けている。まだ安いと考えるか、高くなったなあと考えるかは人それぞれだが、日本の買い負けと円安、世界的な食料争奪戦がこうした「サラリーマンの味方」にまで及んでいる。

 生活意識アンケート(日本銀行、7月6日発表)によれば、1年前と比べて物価が上がったと実感する人の割合は89%に及び、その中の82.9%が物価上昇に「困ったこと」と回答した。

「社会保険も雇用保険も住民税も全部値上げで問答無用に引かれた手取りで生活するわけで、その生活で消費税は10%、光熱費も自動車税も上がる。何でも物価は高くなる一方なのに、ずっと使えるお金は増えないって大変なことなんじゃないですかね」

 大変なことである。本人の努力とか自己責任とは別の問題である。日本の実質可処分所得は驚くほど低くなった。実質可処分所得とは社会保険料や各種税金を差し引いて(ここまでは可処分所得)、さらに物価上昇分などの家計分の目減りも加味した数値である。

 サラリーマンの給料は額面からまず住民税、所得税に健康保険、厚生年金、雇用保険に40歳以上は介護保険が引かれる。会社によっては組合費や共済費も引かれる。この残りの分が手取りで可処分所得となるが、ここからさらに物を買うたびに消費税が10%(新聞などごく一部は軽減税率8%)上乗せされ、自動車を持っていれば自動車税、たばこを吸うならたばこ税、お酒を呑むなら酒税とありとあらゆる商品に二重三重の税金が掛けられている。

 日本はイギリスのような食料品の消費税0%(標準税率20%)とか、そこまで極端でなくともフランスの5.5%(標準税率20%)、ドイツの7%(標準税率19%)などの施策をとっていないため、どんなに大金持ちであろうと貧乏であろうと人頭税のように生きている限りあらゆる税金を払い続けなければならない。30年間賃金の上がらない国なのに税金はひたすら上がり物価も上がり始めた。問答無用に天引きされるサラリーマンにとって、毎年使える金が減り続けるのは当たり前の話である。

死ぬまで働くしかない

「税金のために働いているようなものです。私なんかみなさんより少ないですから」

 ずっと話を聞いていた40代契約社員の独身男性が小さな声で切り出す。仮にCさんとするが、年収は300万円いかないという。彼もまた、いろいろあって異業種から現在の仕事についてまだ間もないそうだ。

「40代で学生とかが住むような壁の薄いワンルーム暮らしです。気楽ですけど、これまでいろいろあって貯金もできていないし、不安ですよ」

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