芸能

『雪女と蟹を食う』『ロマンス暴風域』 2つの深夜帯ドラマに感じる文学的匂い

番組公式サイトより

番組公式サイトより

 作品の出来は予算や放送枠で決まるものでもない。最近は、深夜枠で新たな才能が芽吹くことも多く見られる。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 事件の影響で始まるはずのドラマの初回が延期されたり選挙特番で一回休みが入ったり。テレビ番組の予定がずいぶん変則的になりました。しかし、見るべき物語が確実にスタートしています。7月に始まった2つの深夜帯ドラマに、役者の味わいや挑戦する姿勢、文学的な匂いを感じて、グイグイと惹き付けられてしまいます。

 7月8日、テレビ東京で始まった『雪女と蟹を食う』(金曜深夜0時12分)。原作は漫画家Gino0808による同名作品。主人公は自殺を決意した男・北(重岡大毅)。冤罪によって将来設計が崩れ婚約者とも別れ、死ぬしかないところまで追い詰められた。人生最後に「北海道で蟹を食べてから死ぬ」と決め強盗に入った家に、雪女を彷彿とさせる細身の人妻(入山法子)が。数奇な流れで二人一緒に旅へと出ることに……。

 第一話の冒頭、ジャニーズWESTの重岡大毅さんが見たこともない錯乱した表情で登場。鬼気迫る顔、自殺をはかろうとする追い詰められた絶望感がすさまじい。この社会の絶望を映しているようなリアルな感じに、思わず鳥肌が立つ。

 その一方、現実感が希薄でまるで人形のような不思議な人妻・彩女の存在感も際立つ。演じる入山法子さんが、北とはまた別の虚無感を色濃く漂わせていて、二人は絶妙にマッチし、異世界の旅へと連れ去ってくれる。

「犯人は誰か」とか「真相は何か」といった原因-結果の単線を追うのではなく、ひとつの映像、ひとつの行動にも、視聴者は複数の解釈や複雑な感情を読み取る。見ている側の心にさまざまな思いや感情が浮かんでくる。そんな豊かな曖昧さがあるのも、文学的な表現と言えるかもしません。

 さらに、このドラマが文学的と感じる理由に、言葉があります。例えば「カニを喰いたい」と「死にたい」という異質なセリフのぶつかりあい。まったく違う二つの分野の言葉が組み合った時、緊張感が生まれます。

 主演に注目すると、重岡さんといえばこれまで明るくまっすぐなイメージで、例えば『これは経費で落ちません!』(NHK 2019)で上司に懐いていく子犬のようなカワイイ部下・山田太陽。あの印象が強かった重岡さんだけに、今回の冒頭シーンに度肝を抜かれました。絶望に身をよじる男-演じたことの無い人格に何とかなりきってやろう、という役者の気迫がドラマの見所の一つでしょう。

関連記事

トピックス

自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン
野球人・江夏豊が球界に伝えておくべきことを語り尽くす(撮影/太田真三)
【江夏豊インタビュー】若い才能のある選手のメジャー移籍は「大いに結構」「頑張ってこいよと後押ししたい」 もし大谷翔平と対戦するなら“こう抑える”
週刊ポスト
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《私には帰る場所がない》ライブ前の入浴中に突然...中山美穂さん(享年54)が母子家庭で過ごした知られざる幼少期「台所の砂糖を食べて空腹をしのいだ」
NEWSポストセブン
亡くなった小倉智昭さん(時事通信フォト)
《小倉智昭さん死去》「でも結婚できてよかった」溺愛した菊川怜の離婚を見届け天国へ、“芸能界の父”失い憔悴「もっと一緒にいて欲しかった」
NEWSポストセブン
11月下旬に札幌ススキノにあるガールズバーで火災が発生(右はInstagramより)
【ススキノ・ガルバ爆発】「男は復縁の望みをまだ持っていた」火をつけた男は交際相手A子さんを巻き込んで死のうと…2匹の犬を失って凶行に
NEWSポストセブン
再婚
女子ゴルフ・古閑美保「42才でのおめでた再婚」していた お相手は“元夫の親友”、所属事務所も入籍と出産を認める
NEWSポストセブン
54歳という若さで天国に旅立った中山美穂さん
【入浴中に不慮の事故】「体の一部がもぎ取られる」「誰より会いたい」急逝・中山美穂さん(享年54)がSNSに心境を吐露していた“世界中の誰より愛した人”への想い
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《真美子さんのバースデー》大谷翔平の “気を遣わせないプレゼント” 新妻の「実用的なものがいい」リクエストに…昨年は“1000億円超のサプライズ”
NEWSポストセブン