あれから3年が経った現在の琉月さんは、立ち振る舞いも風貌も“歌舞伎町ホスト”そのものだ。当時は黒だった髪の色をプラチナブロンドに染め、切れ長の一重は美容整形によって大きな二重へと変化していた。彼のSNSには店内価格推定350万円以上はするであろうブランデー「レミーマルタン ルイ13世」の写真もアップされ、大金をはたく“太客”がいることも示唆される。
“主任”という肩書きもついた彼は、歌舞伎町で生きて行く覚悟ができたと語る。「主任っていうのは、この店で代表や店長に次ぐぐらい偉い位置なんだ。俺は、売れるのであれば、なんだって利用する。もう夜の街でやっていくしかないって決めたから」
既に私に対しても敬語ではなくなり、ホストとしての自信がにじみ出ていた。いまの彼には、立派なタワーを建てる“エース”も、ルイを入れる“太客”もいる。勤務しているホストクラブでは2022年8月現在は、「幹部補佐」として活躍しているという。彼はもう、当時のように「刺された」ことを売りにすることはないだろう。だが、それは、歌舞伎町の一ホストとしてのスタートにすぎない。それは新たな「修羅の道」の幕開けでもあるのだ。
取材・文/宇都宮直子
【プロフィール】
1977年千葉県生まれ。多摩美術大学美術学部卒業後、出版社勤務などを経て、フリーランス記者に。「女性セブン」「週刊ポスト」などで事件や芸能スクープを中心に取材を行う。著書に『ホス狂い 歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る』(小学館新書)がある。